No.5286 (2025年08月16日発行) P.71
登録日: 2025-08-07
最終更新日: 2025-08-07
日本医師会は8月6日の定例記者会見で、「紙カルテ利用の診療所の電子化対応可能性に関する調査」結果を発表した。医療情報担当の長島公之常任理事は調査結果を受けて「カルテ電子化の強要は確実に地域医療の崩壊につながる」と述べ、電子カルテの義務化に強く反対した。
同調査は4月18日から6月1日にかけて、現在紙カルテを利用する日医会員の診療所を対象に実施。有効回答数は5466件だった。
電子カルテの導入が可能かという質問に対して54.2%の診療所が「導入不可能」と回答した。「現行の紙カルテを利用したまま、医療情報共有システムのみ併用可能」と回答した診療所は22.8%で、現在紙カルテを使用している診療所のうち77%の診療所が今後も紙カルテを使い続ける必要があると認識していることが明らかになった。
「導入不可能」と回答した診療所の割合は20~40代が29.4%、50代が41.2%、60代が52.5%、70代が61.4%、80代以上が64.4%と医師の年代が高いほど多かった。そのほか従業員数や外来患者数が少ない診療所ほど導入不可能と回答した割合が高いことを踏まえ、長島常任理事は「人口が少ない地域は高齢の医師が多く、電子カルテの導入はかなり難しい状況」との見解を述べた。
電子カルテを導入できない理由としては「導入の費用が高額であり、負担できない」、「電子カルテの操作に時間がかかり、診察が十分にできなくなる」がともに1406件で1位となり、「導入しても数年しか電子カルテを使用する見込みがない」(1301件)、「ITに不慣れであり、電子カルテを操作できない」(1112件)が続いた。
長島常任理事は「地方の診療所はどこも慢性的に人手不足で、IT化に対応できる職員の確保は極めて困難」とした上で、政府に対し、すべての医師が現状のままでも医療を継続できる形の医療DX推進を求めた。