(茨城県 T)
がんの自然治癒(自然退縮)に関する解説は,4年前に発刊された総説論文1)2)に詳細に記述しましたので,この両論文をお読み頂くと,ご理解頂けると思います。
まず,この件を専門的に研究する学会等は,欧米やわが国においてもいまだないと思います。ただし,このような症例に関する論文・学会発表は,19世紀からみられるようになり,20世紀半ばにEversonら3)がこれらの症例に関する詳細な研究発表を行ってから注目を集めました。わが国では1969年に最初の報告がなされて以来増加し,2011年の1年間だけで63例も報告されています。このような症例は,わが国ではがん患者約1.2万人に1人の割合で発生し,6日に1人以上の頻度でみられるということになります。
ここで言葉の定義ですが,「がん」というのは,組織学的または細胞学的に「がん」と確認された症例だけでなく,X線,CT,MRI,超音波検査などで明瞭な腫瘤像が認められ,腫瘍マーカーが高値を示した症例も含まれます。「自然」というのは,「治療がまったく行われなかったもの」と,「がんに対しては有効とは考えにくい療法が行われたもの」も含まれます。「治癒」というのは,主腫瘤および転移巣が消失した症例から,腫瘤が縮小して症状などが緩和した症例まで含まれます。さらに,このような現象がみられた後に再発したものも認められます。
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