□認知症に伴う精神症状や行動障害は様々な用語が用いられてきたが,1996年,99年の米国Lansdowneでの国際会議で,behavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD,認知症の行動心理学的症候)という用語を用いることで合意した。"認知症にしばしば出現する知覚や思考内容,気分あるいは行動の障害"を意味する。
□わが国では,認知機能障害を意味する"中核症状"に対して,"周辺症状"という用語が用いられてきた。これはアルツハイマー型認知症(Alzheimer-type dementia:ATD)の場合には当てはまるが,レビー小体型認知症(dementia with Lewy Bodies:DLB)の場合の幻視などはコア症状として存在し,それを"周辺症状"とするのは適当ではない。BPSDという用語の使用が求められるゆえんである。
□感情・意欲の障害:恐怖,不安,抑うつ・自発性や意欲の低下,無関心,興奮。
□行動障害:徘徊,多弁,逸脱行為。
□幻覚・妄想:被害妄想,嫉妬妄想,迫害妄想・幻視,錯視,変形視,他の幻覚など。
□BPSD治療の目的は本人をその苦悩から救うことにある。
□BPSDを生じる原疾患の診断が重要である。ATDの場合は"中核症状"から派生するが,DLBでは幻視や錯視,レム睡眠行動障害などは疾患の本質的な症状である。
□前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)においても,前頭側頭型認知症行動バリアント(behavioral variant FTD:bvFTD)を主として,常同行動,食行動異常・脱抑制,反社会的行動・抑うつなどは疾患の本質的な症状である。BPSDの治療は認知症の原因疾患の正しい診断から始まる。
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