在宅血液透析のメリットは自らのライフスタイルに合わせた十分な透析量を確保できることであり,その端的な治療効果はQOLの向上と余命の延長である。一般的に透析療法は残存腎機能が7%程度で開始されるが,施設血液透析で標準的な週3回,1回4時間では,クレアチニンクリアランスでせいぜい10%程度の代替である。これが透析患者の不定愁訴や,平均余命短縮の本質的な理由である。在宅血液透析では治療時間と回数を増やすことによって,30~50%程度の代替機能に高めることができる。施設の都合に縛られず,体調も良いため,完全な社会復帰が可能である。よって多くの場合,65歳未満の就業年齢の患者が対象となる。
わが国には在宅血液透析の専用装置がないため,施設血液透析と同じ機器を使用する。機器の準備から治療,その後の回収,機器洗浄まで患者自身と介助者がすべて行うため,患者にはこれらの知識,技術への習得能力が要求される。また,患者は自己血管内シャント等のバスキュラーアクセスを自身で穿刺する必要があり,これがトレーニングに最も時間を要するステップである。患者宅には治療スペースの確保だけでなく,医療機器用の初期電気工事,廃液環境の整備,機材の収納スペースの確保等が必要である。これらの初期工事費用と維持期の電気・水道代の上昇分は,わが国においては(現時点では)患者の自己負担であるが,多くの先進諸国においては公的な支援が整備されている。
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