□在宅患者の多くは高齢者であり,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や低用量アスピリンなどを服用していることも多く,胃潰瘍などの消化器症状を呈することも多い。
□また,消化管運動機能低下による逆流性食道炎,機能性便秘なども多くみられる。
□消化器症状を早くから的確に表現することが難しい症例も多く,腹部所見を注意深く継続的にみていかなければならない。
□胃潰瘍などによる吐血,出血などにも注意は必要であるが,在宅患者で一番出合う消化器症状は便秘や下痢などの排便障害であり,ここでは排便障害に対する対応を中心に述べる。
□排泄は人間の尊厳に関わる問題であり,患者本人の様々な日常生活に影響を及ぼすだけでなく,介護者のQOLをも阻害することになる。そのため排便障害の状態を早期に把握し対応することがとても大切である。
□排便障害の程度,原因について情報を収集する。患者,介護者,訪問看護師,ケアマネジャーなど関係職種からも情報や意見を収集することが,原因や対処法を考える上でとても重要になる。
□排便障害は栄養療法が関係することも多いので,特に胃瘻などから経管栄養を受けている場合には栄養剤の内容,投与スピードなどについてもしっかりと情報を把握する。
□排便障害を認めた場合には消化管の器質的異常を伴う場合があるので,医師としてしっかり触診を行い,特に血便や黒色便の有無などには注意が必要である。必要に応じて直腸指診なども行う。
□活動性が落ちている在宅患者の多くは便秘を伴うことが多く,定期的な排便を促すために整腸剤や下剤を投与していることが多い。便秘の患者を初めてみた場合には便秘の状態に応じて薬剤を選択する。
□高齢者は大腸癌などの可能性もあるので,癌などを疑う場合には状況に応じてCT検査など画像診断を行う。
□下痢を起こしている場合には,その原因が感染性か非感染性かをまず判断することが大切である。在宅患者の多くは予備力が少なく,脱水状態になりやすいため補液を早期に考えることが必要になる。
□排泄は患者の尊厳に大きく関わることであり,十分に説明をして患者や家族の希望をできるだけ取り入れてケアの方法を考えていくことが大切である。
□在宅医療を受けている患者では便秘や下痢などの排便障害はよくみられるということを導入時から説明して,排便障害が患者や家族の負担を増やすことになるため我慢をしないで早めに解決法を考えていくことの重要性について伝えておく。
□便秘,下痢,便失禁などは介護者にとって大きな負担になる。介護力も症例によって違ってくるので,介護者の負担にならないよう早めに解決することが大切である。
□介護力が不足していると考えられる場合には,レスパイト入院や訪問看護師,ヘルパーによる負担軽減なども考慮する。
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