□ADL(activities of daily living)が低下してから独居で自宅にいられるかどうかは介護力に依存する。介護をどれだけ得られるかは経済力に依存する。経済力が乏しい高齢者の独居生活支援は容易ではないが,介護保険制度や障害福祉制度などを組み合わせて支援を行う。
□独居高齢者支援のもう1つの重要なポイントは,安全の確保である。ADLが自立に近い高齢者であれば,独居でも在宅療養はあまり問題がない。しかし身体的虚弱,認知能力低下などで自力生活する能力が乏しくなったとき,安全確保が難しくなり,在宅療養が困難となる。ここでは,それでも自宅で頑張りたい人に対する支援について述べる。
□医療保険のほか,介護保険制度,障害福祉制度,年金保険制度,生活保護制度を基本とし,認知症の場合には成年後見制度などを必要に応じて利用する。不動産を所有する場合は,長期生活支援資金貸付制度を組み合わせることがある。安全確保にあたっては,緊急通報システムなどを利用する。
□公的サービスのみで独居生活を維持することは通常困難である。ある程度の自己資金を使用することが望ましい。現在の高齢者は高度経済成長を生きた世代であり,貧しい場合もあるが,多額の現金や固定資産を持つ人も多い。ただし,これらを自分の医療や介護にうまく利用できるかどうかは別問題である。(同居していなくても)子どもの世代に多額の遺産を残したい人も少なくない。自宅療養継続を希望する場合,経済力のあることは圧倒的に有利であり,資産の有効活用を提案したい。
□病状が安定していれば,ADLが低くても,1日2回程度の食事の提供と排泄・保清の世話がなされれば独居生活は可能である。経済力がある人は,家政婦などを利用して24時間介護を受けるのもよい方法である。
□介護保険では,定期巡回・随時対応型訪問介護看護の利用がよい。
□いずれにしろフォーマルなサービスのほか,インフォーマルなサービスや自費でのサービスを利用することが望ましい。
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