編集・発行: | 日本医学会連合 領域横断的連携活動事業(TEAM事業)「フレイル・ロコモ対策会議」 |
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判型: | B5判 |
頁数: | 472頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2024年08月14日 |
ISBN: | 978-4-7849-2385-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
老化に伴い抵抗力が弱まり心身の機能が低下するフレイル、運動器機能が低下して移動が不自由になるロコモティブシンドローム。関連の深い両者を一括して扱い、概念・疫学、臓器の老化との関係、予防と介入、疾患・病態との関係、老年症候群との関係、包括的ケアなどについて、基礎・臨床・社会医学にまたがる関連47学会が推薦した執筆陣が詳述。
フレイル・ロコモに関わる医師、医療介護福祉従事者、医学系研究者におすすめの一冊です。
第1章 フレイル・ロコモの概念・判定と疫学
1. フレイルの概念と判定
2. フレイルの疫学
3. ロコモの概念と判定
4. ロコモの疫学
5. フレイルとロコモの共通点と相違点
6. 精神・心理的フレイル
7. 社会的フレイル
第2章 臓器の老化とフレイル・ロコモ
1. 骨・関節の老化とフレイル・ロコモ
2. 筋肉の老化とフレイル・ロコモ
3. 脳神経の老化とフレイル・ロコモ
4. 心血管系の老化とフレイル・ロコモ
5. 腎臓の老化とフレイル・ロコモ
6. 内分泌系の老化とフレイル・ロコモ
7. 代謝系の老化とフレイル・ロコモ
8. 免疫系の老化とフレイル・ロコモ
9. 血液系の老化とフレイル・ロコモ
10. 呼吸器系の老化とフレイル・ロコモ
11. 消化器系の老化とフレイル・ロコモ
12. 腸内細菌叢とフレイル・ロコモ
13. 口腔の老化とフレイル・ロコモ
14. 泌尿器系の老化とフレイル・ロコモ
15. 視覚の老化(アイフレイル)とフレイル・ロコモ
16. 聴覚の老化とフレイル・ロコモ
17. 味覚・嗅覚の老化とフレイル・ロコモ
18. 皮膚の老化とフレイル
19. 臓器ネットワークの老化とフレイル・ロコモ
第3章 フレイル・ロコモの基礎医学と先端技術
1. 老化制御とフレイル・ロコモ
2. 再生医学とフレイル・ロコモ
3. ロボット技術とフレイル・ロコモ
4. ICTおよびAIとフレイル・ロコモ
第4章 フレイル・ロコモの予防と介入
1. 予防のための身体活動・運動
2. 予防のための食事
3. 予防のための口腔ケア
4. 予防のための社会活動
5. 予防のための包括的プログラム
6. 小児・思春期・若年成人期からの予防の重要性
7. 教育現場での予防・介入
8. 医学団体による予防・啓発活動
9. 自治体による予防・啓発活動
10. 医療・介護現場での予防・啓発活動
11. 急性期医療におけるフレイルの重要性
12. プライマリ・ケアとフレイル・ロコモ
13. 外傷・骨折とフレイル・ロコモ
14. 運動療法
15. 栄養療法
16. 漢方とフレイル・ロコモ
17. サプリメント
18. 性差と男性ホルモン
19. 性差と女性ホルモン
20. 創薬
第5章 疾患・病態とフレイル・ロコモ
1. フレイルと循環器疾患
2. 呼吸器疾患(がんを除く)とフレイル・ロコモ
3. 肝臓疾患(がんを除く)とフレイル・ロコモ
4. 高血圧とフレイル・ロコモ
5. 脂質異常症とフレイル・ロコモ
6. 糖尿病とフレイル・ロコモ
7. 肥満(症)・メタボとフレイル・ロコモ
8. 痩せとフレイル・ロコモ
9. サルコペニアとフレイル・ロコモ
10. 骨粗鬆症とフレイル・ロコモ
11. 変形性関節症とフレイル・ロコモ
12. 脊椎疾患とフレイル・ロコモ
13. 関節リウマチとフレイル・ロコモ
14. 慢性腎臓病とフレイル・ロコモ
15. 透析医療とフレイル・ロコモ
16. 感染症とフレイル・ロコモ
17. がんとフレイル・ロコモ
18. 外科手術とフレイル・ロコモ
19. 認知症とフレイル・ロコモ
20. うつ病とフレイル・ロコモ
21. 摂食嚥下障害とフレイル・ロコモ
22. 歯科・口腔疾患とフレイル・ロコモ
23. 皮膚疾患とフレイル・ロコモ
第6章 老年症候群とフレイル・ロコモ
1. 排便障害とフレイル・ロコモ
2. 排尿障害とフレイル・ロコモ
3. 褥瘡とフレイル・ロコモ
4. 転倒とフレイル・ロコモ
5. 視覚障害とフレイル・ロコモ
6. 難聴とフレイル・ロコモ
7. 味覚・嗅覚障害とフレイル・ロコモ
第7章 フレイル・ロコモ対策のための包括的ケア
1. ポリファーマシーとフレイル・ロコモ
2. WHO-ICOPEとフレイル・ロコモ
3. 地域包括ケア(介護保険含む)とフレイル・ロコモ
4. フレイル・ロコモ対策のための包括的ケア
わが国は人生100年時代と言われる長寿社会を迎え,健康寿命の延伸が医学上の重要課題となっている。実際,健康寿命と平均寿命との差,つまり介護が必要な期間は男性で約9年,女性では約12年もある。介護が必要になる主な原因にフレイルとロコモティブシンドローム(ロコモ)がある。フレイルは老化に伴い抵抗力が弱まり心身の機能が低下した状態,ロコモは運動器の機能が低下して移動が不自由になった状態で,様々な病気の進行と相まって徐々に生活機能の低下,さらには要介護に至る重大な病態である。フレイルとロコモは関連が深く,これをフレイル・ロコモと一括して克服のための取り組みを行い,また社会に広く啓発することが,2年半にわたるワーキンググループの活動成果として2022年4月に日本医学会連合と領域横断的な80学会・団体より「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」として発出された。
本宣言では,フレイル・ロコモに関し,適切な対策により予防改善が期待できるという認識の下で, ライフコースアプローチと領域横断的アプローチの重要性が謳われている。つまり,メタボリックシンドロームや痩せがロコモやフレイルの要因になっている場合もあるが,身体活動の低下,歩行機能の低下,中年期の肥満,高齢期のやせ,喫煙,過剰アルコール摂取,高値血圧,高血糖,ポリファーマシー,うつ,認知機能低下,社会的紐帯や社会参加の減少,などもリスク因子であり,高齢期のみならず小児期,青壮年期からアプローチする視点が大切である。また,医学会のみならず,市民,産業界,行政,教育界,それぞれの立場の人が,フレイル・ロコモの克服に向けて自らの対策に取り組み,お互いが支え合うことが重要である。 宣言に加わった学会・団体は,それぞれが目標を立てて活動を展開することとしている。さらに,本宣言に基づく活動を領域横断的に展開し,フレイル・ロコモ対策を広く普及啓発するとともに,フレイル・ロコモに関する現在の医学的知見を集積して,わが国における健康長寿社会構築に貢献することを目的として,2022年度に「フレイル・ロコモ対策会議」が組織され,日本医学会連合の領域横断的連携活動事業(TEAM*事業)に採択された。活動の柱は,フレイル・ロコモに関する①領域横断的シンポジウム,②市民啓発セミナー,③基礎・社会・臨床医学的知識を網羅した書籍の刊行である。そのうち本書は③にあたり,本書の刊行によりフレイル・ロコモを広く社会に普及啓発することを目的とする。
本書の刊行に際して, 日本医学会連合TEAM事業「フレイル・ロコモ対策会議」を編集組織とし, 同会議の参加10学会担当者を編集メンバーとして, 宣言に賛同した80学会・団体に加えて,その他の学会・団体からも項目ごとに適任者を選任して,最新の内容を執筆いただいた。改めて関係学会・団体と執筆陣に心から御礼申し上げる。
本書の読者対象は,まず基礎・臨床・社会医学系の研究者ならびに医療介護福祉現場の専門職であるが,地域でフレイル・ロコモ対策にあたる行政担当者,企業の関連製品開発担当者,一般知識人などにも参考になる内容となっている。フレイルとロコモに関する書籍は多く出版されているが,本書のように基礎・臨床・社会医学にまたがる網羅的で教科書的な書籍は存在しない。是非一読いただければ幸いである。
*:Transdisciplinary & Exploratory Activity Momentum
2024年7月
「フレイル・ロコモ対策会議」議長 秋下雅弘
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。