国立がん研究センターは2日、2014年のがん標準診療の実施状況を公表した。前年から最も実施率が上昇したのは制吐剤の使用だった。
調査は、がん医療水準の均てん化を評価する体制を構築するために2011年より開始。14年調査で4回目となる。今回は、がん診療連携拠点病院など全国424施設でがんと診断された患者56万人について、胃・大腸・肺・乳腺・肝臓の5つのがんと臓器横断の支持療法のうち、9つの標準診療の実施率を調査した。
その結果、13年と比較して大きな変化はなかったものの、最も実施率が上昇したのは「嘔吐高リスクの抗がん剤への予防的制吐剤」で、実施率は前年より2.3ポイント高い76.3%だった。 最も実施率が低かったのは前年と同様に乳がんの「乳房切除後・再発ハイリスクへの放射線療法」で35.7%に留まった。一方、最も実施率が高かったのは前年と同じ肝がんの「初回肝切除例に対するICG15分の測定」で、90.9%に上った。
会見で同がん対策情報センターの東尚弘がん臨床情報部長は、乳房切除後・再発ハイリスクへの放射線療法の実施率が低い理由について「放射線療法の前に実施する化学療法の実施期間が長く、その間に患者さんの病状が進行するなどして、それ以上のことができないと判断した可能性など、いろいろな状況が考えられる」と分析するとともに「ここに大きな問題があるとは考えていないが、解釈は難しい」と話した。