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ラダック天空紀行(その3)─満天の星[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(217)]

No.4924 (2018年09月08日発行) P.65

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2018-09-05

最終更新日: 2018-09-04

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意図した訳ではないのだが、ラダック旅行はちょうど新月の時期だった。「其の214」で紹介したように、ラダックの星空は世界一かもしれないと思うと期待が高まる。

しかし、これだけは天気が悪ければどうしようもない。幸い、トレッキングの2泊を含む田舎での4泊は夜中に快晴となり、文字通り満天の星が楽しめた。ベストだったのは、標高4200メートルのパンゴン湖。やはり高い所ほど星がくっきり見える。

これまでにも素晴らしい星空の経験がある。ひとつはキリマンジャロでの夜。深夜12時頃に標高4200メートルにある小屋を出発して5890メートルの頂上をめざす。

その日も新月だった。空が白み始めるまでの数時間、満天の星を眺めながらのトレッキングは最高だった。しんどいかと思っていたが、体調もよく、荒井由実の「やさしさに包まれたなら」を繰り返し口ずさみながら軽やかに登っていった。

「♪小さい頃は神様がいて 不思議に夢をかなえてくれた…」、本当に神様がいて、奇蹟を起こしてくれているのではないかと思えるような素晴らしい星空登山だった。

もう1回は、ドイツ時代の経験。住んでいたハイデルベルクからスイスアルプスのグリンデルワルドまでは車で5時間ほど。天気がよさそうだったので、ご近所の日本人家族といっしょに、週末旅行に出かけた。
標高1000メートルほどだから、それほど高い場所ではないのだけれど、数分に1個くらいの割合で、やたらと流れ星が見えた。8月の中旬だったから、たぶんペルセウス座流星群だったのだろう。

子どもらが寝静まってから、大人だけで星空を見ていた。だけど、ヒデアキちゃんがおねしょで目を覚まし、いっしょに鑑賞することに。おねしょしたけどええこともあってよかったなぁ、とか大笑いしていた。

そのヒデアキちゃん、大学生時代にバイクの事故で亡くなった。それ以降、スイスでの星空は美しくも悲しい思い出になっている。ラダックの星空を見ながらこのことを思い出して、また切なくなっていた。

もう、これだけの星空を見ることは一生ないかもしれない。星空がすごかったと興奮してラダック人のガイドさんに言ったのだけれど、ふぅんという感じで肩すかし。いつも見てたらそんなもんなんでしょうね。贅沢なことやと思うんですけどねぇ。

なかののつぶやき
「明かりのなかったころ、夜はすることがないから、人々は満天の星を見ながら、星座や星座についての神話や伝説を思いついたんでしょうね。恥ずかしながら、星座や星の名前を全然知りません。スマホにいいアプリがあるので、それでチェックをしたらええわと思っていたのですが、ずっと圏外だったので、何もわからず…」

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