著: | 中田 力(新潟大学統合脳機能研究センター長) |
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判型: | 四六判 |
頁数: | 160頁 |
装丁: | 単色 |
発行日: | 2010年12月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-4228-2 |
版数: | 第1版 |
付録: | - |
医療は皆のものである。
だからこそ、美しい民の国・日本では、正しい医療が栄えるはずである。しかし、今、日本の医療が揺らいでいる。
「日本医事新報」の編集者が、臨床医を対象としたエッセイの連載を持ちかけてきた時、普段はすぐに断る私が、なぜか承諾の返事をした。それは、訪ねてきた編集者の心の綺麗さに感動したことと、自分ができることは、現場の心ある医師たちへの応援メッセージを出すことぐらいであると痛感していた時だったからである。
そして、タイトルを「フィロソフィア・メディカ ― 複雑系科学入門」とした。
現場の臨床医は複雑系が何であるかを十分理解している。ただ、自分たちが扱っているものが複雑系であるという実感を持っていない。自分たちが知らず知らずのうちに習得していたものが、人間の叡智が辿り着いた究極の科学であるということを知ることは、それなりに意義のあるものだと思った。
15回の連載を終え、単行本として出版することになり、改めてタイトルを決めることとなった。そして選んだ言葉が、「穆如清風」である。詩経にある烝民の詩の一節であるが、目立たずとも、強い影響を及ぼすさまを表わしている。作者尹吉甫は周の宣王に仕えた名臣だが、強きものを恐れず、弱きものを助け、功を私ごととしない賢人であったと伝えられている。
一人の医師として、こうありたいと願うさまである。