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部屋を間違わないように…[プラタナス]

No.4924 (2018年09月08日発行) P.3

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科医長)

登録日: 2018-09-08

最終更新日: 2018-09-05

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  • 忘れられない取り組みがあります。

    ある85歳の認知症の男性が当院に入院されたのは、徐々に暖かさを感じる年度末の週末でした。失神して救急搬送されたその男性は、10年以上前からAlzheimer病と診断され、近医でドネペジルの処方を受けていました。同居されている奥様と一緒に近所のスーパーマーケットまで買い物に出かけた際に、ショッピングカートに顔を埋めるような姿勢で意識を失ったとのことでした。患者さんは近くにいた奥様の呼びかけによって2〜3分ほどで開眼し、徐々に意識は改善。救急搬送された時には、意識はほぼ清明となりましたが、脈拍40回台の洞性徐脈があり、そのまま精査目的に入院となりました。

    妻によると、実は今までも同様の意識消失は何度かあったとのことで、いくつかの検査で異常がないことを確認し、内服していたドネペジルが原因ではないかと考えました。薬剤を中止したところ、徐脈は改善しその後失神は起こりませんでしたが、まもなく患者さんは病棟内を徘徊するようになりました。早期退院を検討しましたが、ご家族としては入院中に在宅サービスを整えたい、住宅改修をしたいという希望がありすぐには退院できませんでした。

    残り380文字あります

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