6月に常任理事に就任してから「怒涛の日々」と言う城守さん。「日本医師会に入ってくる情報量が想像をはるかに超えていて、それを基に検討を重ねる毎日。『大変な職責を担った』というのが正直な気持ちです」
職務の1つが、今、大きな議論となっている医師の働き方改革だ。「私自身、勤務医の時は自分の健康をないがしろにして診療に邁進していました。しかし、世代間の考え方の違いもありますし、医師も人間ですから、医師自身が健康だからこそ良質な医療が提供できるという観点で、医師の健康保持の重要性は十分認識しています」
大事なことは「医師の健康と地域医療の維持。このバランスをいかに取るか」と強調する。「現在の医療は医師のオーバーワークで成り立っています。医師の業務量に制限をかけると、提供できる医療の量が減りますし、医師の養成には10年という長い期間が必要。今できる改善策を緊急的に取り組みながら、地域医療に大きな軋みが出ないよう、どのように制度設計していくのか。関係者の総意として決めなければならない重要な課題です」
それは広報としての職務にもつながる。「働き方改革は住民の協力も必要。受診抑制ではなく、賢い病院の利用の仕方を広報する必要性を感じています」
地域医療に混乱が生じないよう、“緩やかな”改善を目指す考えは、どの職務にも共通している。医療安全については「マニュアル化が進みすぎると現場で機能しないことも多いので、実用的かつ医療安全の風土が醸成されるシステムを現場の先生方と考えたい」と語る。
中医協の委員にも就任した。「診療報酬体系を簡素化するための抜本改革が必要との意見も聞きますが、現在の複雑な体系は、複雑な医療の提供をできるだけ平等に評価した結果のもの。改定ごとに、使われていない評価を削除して、新たな評価を加える作業を繰り返す中でスリム化していく方が現実的ではないかと考えています」
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整形外科医としてキャリアを積むが、40代半ばに転機が訪れる。親戚が経営する病院の財政が厳しくなり再建を任された。当時は小泉内閣が社会保障費抑制を強力に進めていた時代で、臨床を離れて経営に専念せざるをえなくなる。「金融機関との折衝、組織風土を変えるための取組…、本当に大変でした。医師の臨床業務は、すごく綺麗でありがたい仕事だと、離れてみて感じましたね」
京都府医師会では医療提供体制を担当。国が地域医療構想に取り組む以前から、医療需要の将来推計のデータを収集・分析し、緩やかな機能分化を主導した。
今年からは日本医師会という新たな舞台が活躍の場となる。「経験のない仕事を1から始めることになるので、努力の積み重ね以外ないですね。その仕事の意味がどこにあるのかを常に考えて腹をくくって取り組まないと、お役に立てないと強く感じています」