英科学誌Natureが日本の再生医療等製品の早期承認制度を批判する記事を掲載したことを受け、日本再生医療学会は6日、反論の見解を公表した。再生医療等製品の臨床試験でも、二重盲検法による無作為化比較試験(RCT)を実施すべきとする同誌の主張に対し、「承認された治療薬がない疾患の患者に1日でも早く治療を届けるためにはスピードに欠けており、日本の制度のような新しいアプローチも必要」として、全ての製品でRCTは必須ではないとの考えを示している。
再生医療等製品の条件・期限付き承認制度では、症例数の少ない臨床試験の結果でも有効性が合理的に推定できる場合、迅速な承認審査を行う仕組みとなっている。
Nature誌の記事は、札幌医大とニプロが共同開発した脊髄損傷治療に用いる骨髄由来間葉系幹細胞「ステミラック」の承認取得を受け、1月に掲載された。記事では、有効性・安全性の根拠となった治験について、症例数が対照群なしの13例しかなく、結果が論文として未公表である点などを挙げ、さらにそれが制度上容認されていることを批判的に論じた上で「そのような幹細胞治療の提供は時期尚早で不公正だ」と結論づけている。
再生医療学会は、可能な限り多くの情報を開示する必要性など、批判には「同意できる点は多い」としつつ、希少疾患では治験参加者を揃えてRCTを行うことは難しく、莫大な時間を要すると指摘。同学会主導で構築した「再生医療等製品使用データ登録システム」に蓄積された市販後調査のデータを活用することで、RCTに近い透明性の高いデータ評価が可能になると強調した。
Nature誌は、心不全治療に用いるiPS細胞由来の「ハートシート」が承認された15年にも早期承認制度に疑義を呈していた。