私の専門である漢方は、いわゆる西洋医学とは異なる切り口で診療するためか、一般的な診療では十分な満足の得にくい「悩ましい」患者さんが多く受診されます。
体調不良で受診された70歳台の女性。特定の疼痛や苦痛なく、食欲、便通、睡眠なども異常なし、通常の臨床検査でも手がかりがありません。ただし、漢方医学的に脈や舌、腹部などを診察したところ、唯一、臍を中心に強く冷えていました。そこで、古典で「腹中冷」に用いると記された大建中湯を処方したところ、体調が徐々に改善しました。「あのときは死ぬかと思った」と、1年後にしみじみ述懐されました。
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