認知症が国の課題として位置づけられる中で、2019年6月に認知症施策推進大綱が発表されました。この大綱は、2012年の「認知症施策推進5カ年計画」(オレンジプラン)、2015年の「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に続くものになります。
この大綱では、基本的な考え方として「認知症の人や家族の視点を重視しながら、共生と予防を車の両輪として施策を推進していく」とし、「共生とは、認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また、認知症があってもなくても同じ社会でともに生きる、という意味である」「予防とは、認知症にならないという意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにする、という意味である」と示されています。
そして、大綱と同じく6月に認知症基本法案が与党議員による議員立法として衆議院に提出されました。この法律の目的として、「認知症の予防等を推進しながら、認知症の人が尊厳を保持しつつ社会の一員として尊重される社会の実現を図る」としながら、都道府県及び市町村による認知症施策推進計画の策定努力義務について記載され、いずれの策定においても、当事者・家族等からの意見聴取が求められることなどが示されています。
一方、一般社団法人日本認知症本人ワーキンググループは2019年10月に、「認知症とともに生きる希望宣言」に基づき認知症基本法案に以下の3点を要望しています。①目的、理念の筆頭に「人権」の明記を、②「予防」を「備え」に変え、全国民が認知症に希望を持って向き合うための法に、③都道府県及び市町村の推進計画策定の「努力義務」を「義務」に─。
認知症基本法案は2019年6月に国会に提出され、秋の臨時国会後は閉会中審査となっています。ぜひ今後の国会審議にご注目ください。
内田直樹(たろうクリニック院長)[認知症]