これを書いている2019年12月現在、中医協は、オンライン診療をめぐる支払側・診療側・厚生労働省の三つ巴論議の真っ最中だ。
厚労省の定義によればオンライン診療とは、「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察および診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」である(「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月発表、令和元年7月一部改訂より引用)。
2015年の夏、厚労省より出た通達は、遠隔診療は「離島や僻地に限るものではない」ことをうたい、それがオンライン診療の実質解禁となった。私自身は2016年6月に自施設でオンライン診療を開始した。そして、実際にオンライン診療を行っている臨床医がその成果を世に問うことが必要と考え、2018年4月に「日本オンライン診療研究会」を立ち上げた。以来2年弱の期間に、公開オンライン診療研究会(オンライン診療の事例報告ならびに医政への発言)を3度開催し、また、テーマ別のミニ勉強会を3度(認知行動療法におけるオンライン診療の有用性、保険請求のあり方、患者の声を取りいれること、等)行った。
新しい医療の方法やあり方は、それを実際に行っている現場の声を聴いて制度設計をして行く以外にない。そして、オンライン診療研究会の内部でも、この2年間で、議論の枠組にだいぶ変化が起こってきた。初めのころは「対面診療とオンライン診療とを比べて、どちらに優位点があるか」という論点もかなり出された。しかし、そもそもオンライン診療は対面診療と対比するものではない。オンライン診療は、患者さんの状態を医師が判断して、相応しい時に用いる診療形態である。診療には入院・外来・在宅という形態の別があり、オンライン診療はそこに並列される「第4の診療形態」なのである。
その合意が臨床医たち自身の内部で形成されるのに、この2年の歳月が必要だったとも言える。
黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本オンライン診療研究会会長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)[オンライン診療]