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【識者の眼】「療養担当規則を知らずに絶句される」工藤弘志

No.5000 (2020年02月22日発行) P.37

工藤弘志 (順心病院サイバーナイフセンターセンター長)

登録日: 2020-02-22

最終更新日: 2020-02-18

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診療録の書き方や保険請求の仕方等保険診療に関する書籍が少なからず出版され、それなりに購買されているという現実には、関係者の保険診療に対する不安があると思われます。自分達が行っている診療内容に問題はないにせよ、診療内容の記載方法やそれに伴う診療報酬請求の仕方はこれで良いのか、という不安があるのではないでしょうか。

これは、私の全く個人的な思い込みですが、「不安」の原因の一つは「保険診療」とは何かをよく知らない、正しく教えてもらったことがないということから来るのではないか、ということです。保険診療に関して、私は全く偉そうなことは言えません。

大学を卒業後、脳神経外科に入局した私は、ひとかどの脳外科医になりたい、外科医である限り手術は上手でなければいけない、外科医を武士に例えるならば剣のみが強いだけではいけない、文武両道でなければならない、できる限り多くの論文を書かなければならない、と自分なりに研鑚を積んだつもりでした。

57歳になったある時、所属する脳外科教室の教授から、「先生、手術は十分されたのではありませんか、後は私に任せてもらえませんか」と言われ、私自身も手術はもういいかなと思っていた時期でしたので、「お任せします」と返答しました。必要書類を提出した数カ月後、所属する大学の附属病院長から「厚労省へ推挙しました」とのお話がありました。

面接が必要とのことで、厚生労働省がある合同庁舎へ出かけ、局長と統括管理官の面接を受けました。その中でのやりとりの一部。

統括管理官:「健康保険法をご存知ですか」

私:「名前は聞いたことはありますが、内容はわかりません」

統括管理官:「療養担当規則はご存じですか」

私:「存じません」

統括管理官:「……」(絶句)

局長:「私は、4年間くらい臨床はしましたが……」(療養担当規則くらいは知っていましたよと言いたい様子)

面接が終わった後、私が部屋のドアノブに手をかけて退出しようとすると、 「採用の合否は、後日お知らせしますから」と不機嫌な雰囲気の言葉が私の背中に浴びせられました。
落ちたか。

工藤弘志(順心病院サイバーナイフセンターセンター長)[保険診療雑感②]

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