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本来の意味での『病理学』は驚くほど進歩している [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(5)]

No.4698 (2014年05月10日発行) P.73

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-04-05

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  • 「病理学」と聞いて思い浮かべられるのは、生体組織の検査であれ死後解剖であれ、やはり病理診断だろう。医療の現場においてなくてはならない学問だが、その字面を見てもらうとわかるように、病理とは本来、病の『ことわり』である。

    ローマ時代の医師ガレノス以来、15世紀以上の長きにわたり、「病気というのは体液の乱れによって引き起こされるもの」と信じられ続けてきた。それに対して、そうではない、「細胞の異常こそが病気の本態である」と喝破し、『細胞病理学』を唱えて確立させたのが、19世紀の天才医師ルドルフ・ウィルヒョウであった。

    近代的な意味での病理学は、そのときに始まったといっていい。分子生物学はおろか、感染症学も免疫学も生化学もなかった時代、病気の成因をさぐるのは、顕微鏡的な観察しかなかった。そういった流れから、形態的な病理診断は病理学の一分野として存在しているのである。

    拙者、病理学を教えているとはいえ、病理診断の知識はほぼ皆無でござるゆえ、各論や診断は教えるにあたわず、病理学総論しか担当できぬのでござるが、これがかなり面白うござる。

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