No.4703 (2014年06月14日発行) P.72
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-30
久坂部羊という現役医師の医療小説作家がいる。あの鮮烈なデビュー作『廃用身』から11年。末期がん患者と主治医、それぞれの葛藤を描いた『悪医』は、両者の不均等な関係性を鋭くえぐった秀作だ。
その『悪医』、日本医師会が「日本の医療に対する国民の理解と共感を得ることを目的」に創設した日本医療小説大賞を、畏れ多くも、さだまさし、医師で芥川賞作家の南木佳士の御両名を退けて受賞した。
その久坂部くん、大学時代の同級生なのである。こういう友人がいると面白いことがあっていい。授賞式に招待してもらったのだ。せっかくなので、わざわざ大阪から出向いていった。というわけではなく、東京出張があったので、ついでに列席した。
審査員の篠田節子さんから紹介された授賞理由は、そこまで誉めなくてもいいだろうというくらいの絶賛であった。てっきり作品のテーマで選ばれたと思っていたが、それだけではなく、小説としての完成度を高く評価しておられた。ようわからんのであるが、篠田さんがおっしゃるからそうなんだろうと無理矢理に納得。
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