「真実はいつも1つ」これは、アニメ「名探偵コナン」で、主人公「江戸川コナン」が、推理を披露するときの決め台詞である。医療現場で多くの、原因が不明な症例や臨床所見の解釈が難しい症例など、「真実」がわかりにくいことも経験する。しかしながら、いつも、「真実」が必ずあると思って診療にあたっている。そのきっかけを与えてくれた症例を紹介したい。
私が医師8年目で地方の基幹病院に勤務していた時、開業医から「白内障手術後に1カ月以上充血が止まらない」ということで紹介を受けた。診療してみると、白内障手術の創口が白く盛り上がっており、周りが充血している(写真)。さらに上眼瞼を翻転してみると、べったりと白い粘液(偽膜)を認めた。既に、抗菌薬やステロイドが投与されており、その原因はわからなかった。同僚に聴いたり、教科書をみたりしても、大きなヒントはなく迷っていたが、ふと患者をみると、どこか皮膚が腫れぼったい。よくよく聞いてみると、昔から傷を負うと傷口が汚くなると言う。ケロイド?でも、眼部のケロイドは、あまり聞かないし……。いろいろ調べてみようと、PubMedで「術後」「偽膜」「ケロイド」などの検索ワードを入れてみた。すると、「リグニアス結膜炎」という疾患が検索に引っかかった。そういえば、偽膜ができる結膜炎として聞いたことがあるが、術後にできるのか?と不安に思い、調べてみると、フィブリンを溶解するプラスミンの前駆体であるプラスミノーゲン(PLG)が欠損するときに生じるらしく、外傷や手術を契機に粘膜組織にフィブリン塊を認めるという。
残り238文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する