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【識者の眼】「脳卒中と新型コロナウイルス感染症」峰松一夫

No.5012 (2020年05月16日発行) P.66

峰松一夫 (公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)

登録日: 2020-04-30

最終更新日: 2020-04-30

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わが国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)非常事態宣言下にある(2020年4月末段階)。その悪影響は医療、福祉全般に及び、一部の地域では既に「医療・介護崩壊」とも言える状況である。脳卒中は、その影響が最も深刻な疾患の一つといえる。

1)学会、研究会等:2020年3月以降に予定されていた脳卒中関連の学会、研究会等はほぼ全て中止、延期となった。一部では、web講演、TV会議に置き換えられている。

2)脳卒中と新型コロナウイルス感染症との因果関係:脳卒中とCOVID-19との間に直接的な因果関係は示されていない。中国からの報告では、非重症例での脳卒中合併率は0.8%、重症例では5.7%に達する(Mao L, et al:JAMA Neurology, April 10, 2020.)。脳卒中のリスクである加齢、高血圧、糖尿病などがCOVID-19の重症化のリスクと重なるためと推察されている。

3)脳卒中救急医療体制の崩壊:地域中核病院でのCOVID-19院内感染発生や、感染防御への医療資源の重点投入のあおりで、一部の脳卒中専門医療機関での脳卒中患者の受け入れ停止・制限が始まっている。

4)脳卒中介護体制の崩壊:脳卒中患者の多い回復期リハビリテーション病棟・病院、介護施設での集団感染発生、機能停止〜制限が深刻化している。

5)予防、再発予防、重症化防止:啓発機会の減少、健診の全面中止、医療機関への受診控え、在宅療養の長期化に伴う運動不足、フレイル進行などが問題である。いずれも脳卒中発症、再発、重症化につながりうる。

脳卒中学会や協会では、上記のような危機的状況について状況分析と対応検討が行われている。COVID-19の終息には1〜2年が必要であり、終息後も医療、経済、社会の復旧、復興には長期を要するかもしれない。後期高齢者が急増する2025年問題も迫っている。今後の「脳卒中」医療・福祉の危機回避のためには、国を挙げての対策が必要である。

峰松一夫(公益社団法人日本脳卒中協会理事長、国立循環器病研究センター名誉院長、医療法人医誠会臨床顧問)[脳卒中]

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