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【識者の眼】「訪問看護ステーションの実態」齋藤訓子

No.5014 (2020年05月30日発行) P.60

齋藤訓子 (公益社団法人日本看護協会副会長)

登録日: 2020-05-14

最終更新日: 2020-05-14

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さて、前々号(No.5000)では本連載において、日本看護協会が取り組む「訪問看護師倍増対策」を紹介することを述べました。本号ではその第1弾として訪問看護ステーションの実態について御紹介いたします。

昨年11月20日の中医協総会資料で訪問看護の利用者は医療保険で28.9万人、介護保険で55.4万人と出されました。そのサービスは訪問看護ステーションと病院、診療所から提供されていますが、同資料によれば訪問看護ステーションは9964カ所、病院からの提供は1519カ所、診療所からの提供は2411カ所となっています。圧倒的に訪問看護ステーションからの提供が大半を占めている状況です。訪問看護が医療保険に位置づけられたのは1994年ですが、その後、介護保険サービスにも位置づけられ、その数は4000カ所を超えました。しかしそれ以降なかなかステーション数は増えず、なぜ伸び悩むのか、日本看護協会でも厚生労働省の補助金で研究調査を行ったところ、その課題は多岐にわたりました。

しかし、2019年4月の全国訪問看護事業協会による調査では、稼働している訪問看護ステーションが約1万1000カ所を超えています。増加の契機になったのは2012年度診療報酬・介護報酬同時改定です。医療保険でも介護保険でも訪問看護には様々プラスの評価がなされました。その結果、事業に参入する方々が増え、1000カ所程度/年の増え方になりました。介護保険ではサービス供給量確保のために一部のサービスを除いて営利法人の参入が認められていますが、先の資料によれば訪問看護ステーションの設置主体は営利法人が約半数を占めています。しかし、増加と同時に、休止・廃止の訪問看護ステーションも500カ所前後/年と増えています。つまり1000カ所/年増えても半分休止・廃止に至るという実態であり、このことは今後、需要が増えると見込まれている在宅療養者を支える訪問看護の安定的なサービス提供という面では大きな課題があると思います。なぜ、訪問看護ステーションは休止・廃止に追い込まれるのか。おそらくは人材の確保の困難さであろうと推測はしますが、休止・廃止した訪問看護ステーションの調査は容易ではありません。それはなぜか、次回でご紹介したいと思います。

齋藤訓子(公益社団法人日本看護協会副会長)[在宅医療]

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