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【識者の眼】「総合診療が強みを発揮する『多疾患合併患者』」草場鉄周

No.5015 (2020年06月06日発行) P.58

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-05-16

最終更新日: 2020-05-16

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総合診療の専門性とは何か。国の「専門医の在り方検討会」の最終報告(2013年)では、「総合診療医には日常的に頻度が高く、幅広い領域の疾病と傷害等について、わが国の医療提供体制の中で、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的に提供することが求められる」とあり、「扱う問題の広さと多様性が特徴」と示され、最後に「地域によって異なるニーズに的確に対応できる『地域を診る医師』としての視点も重要であり、他の領域別専門医や他職種と連携して、多様な医療サービスを包括的かつ柔軟に提供することが期待される」とそのあり方が明確に示されている。

しかし、この説明では地域密着型の内科系開業医のあり方と何が違うのかと指摘された際に、返答に窮することも多い。そこで、筆者は具体的な健康問題を使って総合診療医の専門性を説明することが多い。このコラムで何回かにわたり、そうした健康問題をご紹介したい。

最初の健康問題は、多疾患合併患者の診療である。高齢化率が上昇する中で多科受診する患者の数も増加し、複数の診療所や病院を受診することも珍しくない。その際、臓器別の専門医しかフォローできない特定の疾患を除き、総合診療医はコーディネーターとして80〜90%の疾患に対応することができる。その結果、包括的な医療の中心的な役割を果たすことができ、重症化した場合などには各診療科の医師と連携をとるハブとなる。そうした役割分担で、検査や処方の一元化が実現し、効率良く包括的な診療管理が可能になる。

現在、国は「医療計画の見直し等に関する検討会」で外来機能のあり方について様々な角度から検討を始めている。そこでは、大規模な病院の外来診療のあるべき姿に焦点が当たっており、多くの識者は病院勤務医の負担軽減も含めて、外来診療のボリュームを減らすべきと論じている。ただ、その前提は、診療所・中小病院の外来が包括的な診療を効率良く展開することであり、それがないと患者は行き場を失う。多疾患合併患者の診療はまさに医療改革の大きな論点の一つである。

日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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