No.5016 (2020年06月13日発行) P.66
細井雅之 (大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科部長)
登録日: 2020-05-16
最終更新日: 2020-05-15
私どもの地域の糖尿病病診連携の会DMnetONEでは、年に1回、総会を開催している。いくつかの医療機関から成り立つ医療団体として、企業との共催事業を行いやすいようにしている。今年は第12回目の総会を行った。
総会の前には、会員の地域医療機関にFAXで、連携の問題点を無記名で記載していただいている。会員の先生の意見を伺う狙いである。本年は以下のようなFAXをいただいた。「貴院は、患者離れが悪い。呼吸器内科などはすぐに患者が返ってくるが、貴科は戻ってこない。戻ってきても、貴科が検査を行うので、当院では何もすることがない。これは当院だけでなく、他の医院も言っている」。この意見には、いささかめげてしまった。「逆紹介が少ない、患者が返ってこない」ということは、常に言われていたこと。患者さんが大病院に集中することを減らす目的で、糖尿病連携手帳を使って、逆紹介をしているつもりであった。すぐに、当科の外来担当医に、このFAXを回覧し、逆紹介を増やすようにはっぱをかけた。
「何もすることがない」にも困った。大病院は、地域医療機関ではできないような画像検査や栄養指導などをしているはずであるが、どうやら、血液検査ですら、地域医療機関ではしていないケースもある。患者さんによっては、病院で受けているといって、6カ月に1回の採血検査しか受けない者がいるようである。本来は、糖尿病連携手帳を使って、採血、採尿、便潜血などの合併症チェックに関してそれぞれの医療機関ができることを分担していただく。糖尿病パスはそういった循環型パスであることをご理解いただいていない医療機関もあるようだった。患者離れが悪いではなく、循環してもらうものである。12年経つと、本来の目的が忘れられているのかもしれない。本年の総会では再度、糖尿病地域連携の趣旨を説明し、病院ホームページに掲載することにした。
それにしても、血液検査すら6カ月以上受けていない(受けようとしない)患者もいるのには驚く。Win-Winのはずが、Loss-Winと憎まれていたようである。
細井雅之(大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター糖尿病内科部長)[病診連携③]