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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症で大きく変わる女性診療」柴田綾子

No.5014 (2020年05月30日発行) P.54

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-05-19

最終更新日: 2020-05-19

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新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)により、この数カ月で生活や医療の形が大きく変わってきています。今日は、女性診療に関する3つの大きな変化について紹介します。

1. 不妊治療の再開

2020年3月に国際的に不妊治療の自粛・延期が発表され、日本生殖医学会からも4月1日に同様の声明が発表されました。これは、不妊治療の通院による感染拡大の予防、感染による妊婦・胎児への影響が不明なこと、妊娠中に使用できる薬が限定されることが理由となっていました。幸い、妊婦であってもCOVID-19の感染リスクや重症化リスクは非妊娠時と大きく変わらないことが分かってきました。また、妊娠中の感染による胎児の奇形リスクの上昇も報告されていません。緊急事態宣言の一部解除に伴い5月18日に日本生殖医学会より地域の感染状況や患者背景を考慮しながら不妊治療の再開が通知されました。今後は、感染予防をしながら不妊治療を提供する体制を整える必要があります。

2. オンライン診療の導入拡大

初診からのオンライン診療の暫定的導入により、低用量ピルや緊急避妊ピルのオンライン診療が増えることが予想されます。一部地域では、遠隔胎児心拍数モニターを使った遠隔妊婦検診が行われています。また、日本では未認可ですが、欧米では妊娠中絶薬による遠隔妊娠中絶術も提供されています。日本では学校閉鎖により思春期の妊娠相談が増加し、米国・豪州では中絶難民がニュースになるなか、予想外の妊娠への対応が急務になっています。

3. 働く妊婦の母性健康管理措置

2020年5月7日より、妊娠中の労働者にとってCOVID-19の感染に対する心理的ストレスが母体または胎児の健康保持に影響があると判断された場合、作業の制限や在宅勤務または休業を申請できるようになりました(母性健康管理措置の改正)。主治医(医師、助産師)が母性健康管理指導事項連絡カードに記入し、労働者より事業所に提出すると、措置を講じる義務が発生します(休業中の賃金については個々の事業主に任されています)。

これから日本でも、COVID-19に対応しながら、女性の健康を支援する医療体制をつくっていく必要があります。

【参考】

▶新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知(2020年5月18日版)

 [http://www.jsrm.or.jp/announce/195.pdf]

▶厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置について」

 [https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/000628246.pdf]

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[新型コロナウイルス感染症]

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