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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:味嗅覚障害は誰に発症しやすいか?」岡本悦司

No.5016 (2020年06月13日発行) P.54

岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部長)

登録日: 2020-05-29

最終更新日: 2020-05-29

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新型コロナウイルス感染症の重要な初期症状として味嗅覚障害が早くから注目されている。発熱、呼吸困難といった全身症状に先行して発生するといわれ、通常はあまり見られない症状であることから対策上も重要である。こうした特異な症状は、ネット上で公開された情報だけでもおおまかな頻度や傾向を知ることができる。東京に次ぐ感染者が出た大阪府は、4月3日(この時点での感染者数累計347人)までは感染者の詳細な症状の出現状況を公表していたので、データが得られる319人について分析したところ興味深い傾向がみられた(4月4日以降は、重症、軽症等の程度のみの公表となり、詳細な症状は公表されなくなった)。319人中、無症状は37人(11.6%)で、何らかの症状を有する282人がのべ751の症状を示していた(平均2.7、最大7)。出現率でみると、最も多かったのは発熱(84.0%)で、次いで咳(50.0%)であった。味嗅覚障害はのべ34人(有症者の12%)に出現していたが、味覚障害に限って年齢階級別にみると、最も高かったのは20代で20.0%(13人/有症者65人)、次いで30代13.6%(6/44)であった()。逆に70、80代はいずれもゼロだった(30人中ゼロ)。興味深いことに性差はなかった(男9.3%[15/162]vs. 女9.2%[11/120])。ちなみに韓国大邱医師会による調査(Yunghyun Lee, et al:J of Korean Medical Society. 2020;35(18):e174.)では味嗅覚障害の出現率は15.3%で、若い患者に頻度が高い、という点で筆者による分析結果とほぼ一致している。ひとつ異なるのは、韓国での調査では明らかな性差がみられ、女性の方に頻度が高かったということだった。

わが国のコロナ対策は保健所による詳細な疫学調査が強みであり、蓄積された膨大な疫学情報を世界に発信すれば有用なエビデンスを提供できると期待される。

岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部長)[新型コロナウイルス感染症]

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