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【識者の眼】「これって著作権侵害? ─医療機関における著作権の隠れたリスク」川﨑 翔

No.5018 (2020年06月27日発行) P.59

川﨑 翔 (よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)

登録日: 2020-06-03

最終更新日: 2020-06-03

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今回はクリニック経営における著作権法違反とそのリスクについてお話ししたいと思います。「執筆以外で、著作権の問題が生じることがあるの?」と思われるかもしれませんが、実は意外と問題になります。

そもそも、著作権の対象となる「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1号)と規定されています。ちょっとわかりにくいのですが、「創作的な表現は著作物になる」とご理解いただければよいと思います。当然、音楽や映画といった動画コンテンツも著作物になります。

「クリニックで流しているBGMは大丈夫なのか」「待合室でお子さん向けに流している映画は大丈夫なのか」と気になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まず、BGM(音楽)についてみていきましょう。通常の店舗であれば、BGMを使用する場合、店舗の面積などに応じてJASRAC(日本音楽著作権協会)に使用料を支払う必要があります。ただし、医療機関については使用料の支払いが免除されています。そのため、市販のCDやインターネット配信された音源(JASRACの管理楽曲)については、使用料を支払わずにクリニック内で利用しても問題ありません。

では、待合室で映画等のDVDを流すことはどうでしょうか。結論からいうと「著作権侵害(著作権法違反)になりうるので、注意が必要」ということになります。

市販されている映画DVD等は、家庭内で視聴することを目的に販売されており、それ以外で利用することは著作権法違反になります。つまり、市販の映画DVDを待合室で流すことは著作権法違反です。このような著作権法違反の場合、10年以下の懲役又は1千万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性(法人の場合、3億円以下の罰金)があり、そのリスクは決して無視できるものではありません。それだけではなく、権利者(映画会社)から損害賠償請求を受ける可能性もあります。業務用の利用(営業施設内での視聴など)が認められているDVDを流す必要があるでしょう。

川﨑 翔(よつば総合法律事務所東京事務所所長・弁護士)[クリニック経営と法務]

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