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【識者の眼】「手術報酬についての基本的考え方」岩中 督

No.5021 (2020年07月18日発行) P.67

岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)

登録日: 2020-06-30

最終更新日: 2020-06-30

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外保連手術試案は、手術料のうち人件費を技術度・外科医数・所要時間で科学的に算出し、実態調査でその都度修正を加えてきた(No.5016で解説)。ただ本来手術料は、「ヒト(人件費)」「モノ(医療材料)」「設備(医療機器)」に加え、その手術が持つ意義や貢献度などを配慮して決定されるべきである。外保連では2016年度診療報酬改定時より「新しい評価軸」を策定した。①手術の貢献度としての、生命維持や延命効果、QOLの維持や改善効果、②医療紛争リスク、③手術中の緊急度、特に手術時間を短縮することで生命予後の改善が見込める手術の意義、④二つの命を扱う手術(帝王切開術など)、⑤費用対効果─である。これら5項目は、手術料に〇%加算が必要などの根拠を提示することが困難であるが、従来のヒト、モノ、設備という科学的根拠を示しやすい評価軸に加え、厚生労働省とのヒアリングの席などで検討してほしい項目であると主張している。

その上で各論として、①麻酔や手術に使用される血液製剤や薬品などの個別の算定、②手術試案に収載されている人件費、医療材料費に加え、手術用機器に係る経費、間接経費、手術の貢献度や付加価値の勘案、③同一皮切で複数の手術が実施される場合の、術式ごとの手術料の算定、④緊急手術に対する適切な加算、⑤未熟児、新生児、乳幼児手術での適切な加算、⑥妊娠女性に対する手術での適切な加算─などの基本的な要求を厚生労働省に提示してきた。これらの各論の多くは現時点でかなり認められているが、まだまだ不十分な点も多い。

一方、高額設備を必要とする手術において、備品の導入経費、維持経費、保守管理経費などもぜひ手術報酬で評価してもらいたいと思っている。ただ、公表されている定価と納入価格との大きな乖離、備品の使用頻度によって大きく異なる1回あたりの経費(手術室における使用回数が年間20回と200回では10倍の違いが発生)より、手術試案への収載を断念した経緯もある。高額備品を使用する個々の領域から、ヒアリングなどを通じて厚生労働省へ強く発信していただくことを期待している。

次稿では、整理が行き届いていない手術診療報酬Kコードと外保連IDである術式試案コードSTEM7について概説する。

岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連]

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