No.5022 (2020年07月25日発行) P.65
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2020-07-22
最終更新日: 2020-07-17
病理学総論の講義日程がおわった。「其の299 遠隔講義」で書いたように、Zoomによる配信などせずに、英語の教科書とプリントによる自学自習方式にするつもりだった。しかし、途中でやり方を変更した。
学習範囲の質問などのアンケートを提出させて、それに対して回答を書けばいいと思っていた。しかし、3~4回やってみて早くもギブアップ。理由は、毎回80名以上と提出数がえらく多かったから。いちいち返事を入力するには時間がかかりすぎる。
口頭で答える方がはるかに楽だ。かといって、それだけをネットで配信するっちゅうのは、教育上さすがにあかんような気がする。なので、本末転倒だが、回答のついでにやむなくZoom講義を開始した次第。
例年、出席者数は40~60名くらい。午前中の講義はもっと少なくて、開始時の8時50分には20名程度。なので、Zoom講義でもせいぜい同じくらいかと思っていた。
ところが、毎回90名近い出席者。自宅にいなければならないという事情があったにせよ、予想以上に多かった。午前の講義でもスタート時から同じくらいの出席者数で、さらにびっくり。もちろん何より肝心なのは講義の評判だが、これには腰が抜けた。
いつもは400字程度にしていたが、最終回はもっとしっかり書いてもらおうとアンケートの字数を1000字以上へとアップさせた。そして、「病理学総論およびその講義と私」というエッセイ風のお題を与えてみた。
なんと、なんと、絶賛に次ぐ絶賛の嵐!毎日が退屈でしかたがなかったから面白く思えただけかもしれない。たとえそれを割り引いても、ここまで大好評とは夢にも思わなかった。毎年あんなに不評やったのに…。
たくさんの学生が書いていたのは、通常の講義に比べて集中できたということ。そういえば、講義中はビデオをオンにして顔出しさせていたのだけれど、居眠りしているような子はまったく見当たらなかった。
講義は一期一会の「ライブ」だと思っているので、録画配信はせず。そのおかげで規則正しい生活ができた、というのも多数。う~ん、そんなことで大丈夫かという気もするが、まぁよしとしよう。通学しなくていいから楽である、というのも多かった。自分もそうだったから、これはよくわかる。
で、講義の内容がどのように絶賛されたかについては、次週にご紹介いたしまする。
なかののつぶやき
「新型コロナウイルス感染に対する行動制限措置、だいぶと緩和されてきていますが、大学はかなり厳しいままです。講義はしてもいいけれど、席は十分な間隔をとって、ということなので、事実上不可能です。もうちょっと緩めてもいいように思うのですけど、あかんのですかねえ。学生たちが学問に対する飢餓感を持つようになり、見違えるように勉強してくれるようになったら言うことないんですけど、さすがにそれは甘いでしょうね」