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絶賛の嵐(下)[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(314)]

No.5024 (2020年08月08日発行) P.66

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-08-05

最終更新日: 2020-08-04

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「大学のほとんどの講義の内容は何年かすると忘れてしまうと思いますが、この講義の内容は私の記憶に一生残るだろうと思います。それほど斬新で面白い講義でした」。

これを絶賛と言わずして何を絶賛というのか。最終回の学生アンケート、ここまで褒めちぎってあるのはさすがに少なかったけれど、80名あまりの提出者のうち10名以上からは同じようなコメントがあった。

どうして今年だけこんなに好評なのか、不思議である。前回にも書いたが、例年と同じ内容である。講義だけではない、雑談の中味も似たり寄ったり。やはり新型コロナのせいで退屈しきっていたためだろうか。

雑談では、日常生活とか、これまであったこととか、こういう問題についてはこう考えるとか、好き勝手なことを話している。学生にとってはそれが新鮮だったようだ。

「今まで何人もの先生の講義を受けてきたが、自分のことを語る先生は一人もいなかったので、教授になるような人は別次元で生きているかのように感じていた。色んな面白い話を先生が楽しそうに話すのを見て、自分はどんな人生を歩みたいのかイメージするようになった」。

ホンマですか。みなさん、科目内容を教えるためだけに講義してはるんですか。そんなもん、本を読んだら書いてある。医学専門学校や国試の予備校ではない。いやしくも大学での教育がそれではあかんやろう。

「先生の言うことがすべて正しいとは思いません」というのもたくさんあった。そんなコメントを見ると、むっとするよりも、ちゃんと考えてくれていると嬉しくなる。

例年の講義アンケートは、短いのを書かせていただけだが、今年は400字程度と長くした。完全自由記述なので、面白いテーマの子もいれば、さっぱりなのもいる。それから、文章の上手い下手が非常に大きい。

他人が読んでしっかりと意味のとれる文章を書く能力は、将来なにをするにも重要だ。普段よほど文章を書く機会がないのだろう、回を追うにつれ、学生の多くは文章力があがっていった。これも遠隔講義の大きなメリットだったと思っている。

いやぁ、ええことずくめやったなぁ、医学部で教え始めて17年目、いままで文句ばっかり言うてたけど、教育ってやりがいあるやん。うれしいなぁ。本当にそう感じていた。ただし、試験の結果を見るまでは…。

なかののつぶやき
「読んでいただいたらわかりますが、今回の本文はものすごく中途半端な終わり方になってます。すみません。「絶賛の嵐、全3回」は、最後に「講義がすごく好評だったし、外に出られないから勉強時間もたっぷりあったようで、試験の成績も素晴らしかった」とか、美しく締めくくる予定にしておったのです。ところが、現実はそう甘くありませんでした。で、次回に続きます。う~ん、世の中はなかなか思い通りにはいかへんもんですわ」

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