No.5026 (2020年08月22日発行) P.57
安部好弘 (日本薬剤師会副会長)
登録日: 2020-08-05
最終更新日: 2020-08-05
長い梅雨が明け、東京にしてはいつになく澄んだ青空の日曜日。ついGo Toしたくなるところだが、新型コロナウイルス陽性者数は過去最多との報道。部屋に籠って本稿に取り組むこととした。
さて、報道によれば、オックスフォード大(英国アストラゼネカ:AZ社)が開発しているワクチン「AZD1222」の第Ⅰ/Ⅱ相試験の中間結果がランセット誌に公表され、現在第Ⅱ/Ⅲ相試験が複数の国で進行中。AZ社は日本に1億回分のワクチンを供給することを日本政府と協議しているとのこと。また、加藤厚労大臣は、米国ファイザー社のワクチンが承認された場合、来年6月までに6000万人分の供給を受けることで基本合意をしたと発表している。個人的には、日本医療研究開発機構(AMED)が支援している5種類のワクチンに期待したいが、承認というゴールに至る時間の競争という点では英米中が一歩進んでいるようである。ただし、あらためて日本での臨床試験を実施した上で承認ということになれば、時間の優位性はなくなってしまうことになろう。
厚労省は、今年の5月にレムデシビルを早期承認した際、ワクチンに関しても適用条件が満たされれば「特例承認」ができるよう政令を改正している。そのため、英米で承認を受けた前述のワクチンもその対象となることが予想される。一方、日本人に対する臨床試験を省略した場合、人種差などのリスク要因を十分に検討する必要があろう。ワクチン接種の場合、接種対象者は膨大な人数になり、使用後のモニタリング等も日常生活の中で実施することになる。この点は、重症入院患者に対し厳密な医学的管理下の使用に限定されているレムデシビルと大きく異なる点である。政府は、8月中を目途にワクチン接種の基本方針のとりまとめを行うとのことである。早期アクセスと未知のリスクという相反する要素について、国民が十分な理解の下でワクチンを利用できるような制度となることを期待している。
安部好弘(日本薬剤師会副会長)[薬事・薬剤師]