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【識者の眼】「オンラインによる研修の進捗管理と記録─右に会議、左に手帳、指導明けはウェブ飲み会!?」吉田 伸

No.5026 (2020年08月22日発行) P.63

吉田 伸 (飯塚病院総合診療科)

登録日: 2020-08-11

最終更新日: 2020-08-11

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前回(No.5022)は専門研修の教育講演や事例討論をビデオ会議でオンライン化したというお話をした。今回は、総合診療専門研修の進捗管理と記録のオンライン化について書きたい。

そもそも研修管理をなぜやるのか。私としては、下記の3点だと思っている。

○専攻医ごとに、獲得すべき能力群に基づいた経験症例、症候、プロジェクトが適切に進んでいるか、未経験分野に関して研修プログラムで機会を創出する必要はないか、の確認

○専攻医が、様々な経験を通して得て学んだことをまず自分の言葉に書き下し、指導医との対話や文献・テキストの精読によって得た視点の幅広さや学術的な位置づけを追記することで、専門医としての能力獲得を証明

○専攻医が心身健康に研修および業務を遂行できているかの確認と支援

当院のプログラムでは、独自の研修カリキュラムと、研修チェックポイント表を指導医チームで開発しており、家庭医療専門研修(家庭医療専門研修は現在も新家庭医療専門研修として存続しているため)における必要能力群を、自プログラムの研修環境における行動計画に落とし込んで各専攻医に提示できるようにしていた。研修手帳は紙ベースの手帳として提出が必要であったが、希望者は上記カリキュラムやチェックポイントをウェブ資料で共有し、入力した自らの省察や指導医のコメントを印刷して貼ってもよいことになっていた。

そしていよいよ、2020年4月、日本専門医機構の総合診療専門医検討委員会より、研修管理システムGRSと、オンライン研修手帳J-GOALが発表された。これはウェブベースで専攻医が必要症例や省察を書き込むことができ、指導医が遠隔で指導コメントを入力できるようになっている。現在、登録と入力の操作が難しく、絶賛苦戦中であるが(笑)、全専門研修のなかで最もローテーションが多く、場合により僻地離島など遠方で研修を行う総合診療専門医にとっては、いいかもしれない。ただ、専攻医諸君にはますます『指が話す』というか、感情や考えをふさわしい言葉選びでタイピングできる技術が求められるであろう。指導医のタイピングは概して無茶速いので、圧倒されないように(笑)。

これからの研修管理は、画面左にJ-GOALの研修手帳、画面右にビデオ会議で専攻医の顔が写っているのが当たり前の風景になるのだろう。昭和の指導医としては、その後は焼き肉&ビールに連れて行きたいのだが、今はウェブ飲み会となるのだろうか。その時は酒と肴のクーポン券を奢ってあげればよいのか。やれやれ時代は変わりつつある。

吉田 伸(飯塚病院総合診療科)[総合診療指導医奮闘記⑦]

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