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お母さんのこと、気持ち悪いかい？［プラタナス］
見るたびに心に痛みが走る一葉の写真がある。母と私が写っている30年ほど前の古い写真だ。統合失調症だった母は私の患者ではないので、厳密に言えば「私のカルテ」の人ではない。しかし、私にとって母はすべての精神疾患の象徴だった。
母は結婚前から精神科に通院、私を出産後から徐々に病気が進行し、私が10歳頃には子どもの目で見ても「病気」だとわかった。数々の奇行のため父から離縁され、父に引き取られた私は十数年ぶりに母と再会した。この写真はその時に撮ったものだった。一人娘と再会した母は感激して、私に身体を擦り寄せカメラに収まったが……私は母が怖くてその場から逃げ出したかった。急性期の鬼のような母の形相を、私は忘れてはいなかった。硬い表情を崩さない私に母が聴いた「お母さんのこと、気持ち悪いかい?」
虚を衝かれ、私は何も答えられなかった。母亡き後、「違うよ」と答えなかったことをどれほど後悔しただろうか。私はあの時、母が、そして統合失調症という得体のしれない病気が心底怖かった。
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