No.5047 (2021年01月16日発行) P.61
馬見塚統子 (社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)
登録日: 2020-11-30
最終更新日: 2020-11-30
8050問題やダブルケアなど今日の多様化・複雑化した福祉ニーズに対応するため、既存の高齢、障害、児童等の制度ごとの縦割りを超えて包括的にかかわる「新たな相談支援の仕組み(重層的支援体制整備事業)」が、来年度から本格的に全国展開される運びとなりました。
先の通常国会で「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、2021年度から財源の裏打ちを得た法定の恒久事業として、希望する市区町村で実施されます。
この事業は以下3つの取組を重層的に行うことになります。①相談支援:あらゆる生活課題を受け止め多機関協働で支援にあたり継続的にかかわりを持つ(伴走型支援)、②参加支援:就労支援、居住支援、居場所機能の提供など、「社会とのつながり」を回復・維持できるような支援、③地域づくりに向けた支援:地域のなかで支え合い見守り合う関係性が育まれるように「場づくり」やコーディネートを行う支援。
厚生労働省はこの事業を行うにあたり、これまでの相談者の属性に基づく縦割り体制を見直し、市町村が創意工夫をもって包括的支援体制の構築に取り組めるように、かつ、現場が動きやすいように法律や予算措置の在りようを再検討しました。参議院においてこの事業を実施するに当たっては「社会福祉士や精神保健福祉士が活用されるよう努めること」と附帯決議され、我々社会福祉士らに期待がかかっています。
この事業は地域の既存の相談支援機関を基盤として地域での連携・増員をもとに発展させていくことが予想されますが、大事なことは支援体制側のバックアップです。これまでは自分の支援対象者の守備範囲が明確であったのが、これからはアンテナを一歩先へ張り巡らせ、これまで制度上の狭間になり手の届かなかった方たちへの支援(気づきや見立て、かかわり)が必要になります。守備範囲が広がるということは、業務に対する不安や負担と対峙していかなければなりません。そのため職務にあたる各々が、制度によって人を支援する以前に、まず人権の尊重や専門職の倫理綱領に沿った、ソーシャルワークの価値を根幹とした支援ができるように、専門職団体や委託元からの教育や研修を受けたり、支援者同士の交流の場を設けたりするなど、支援する側へのバックアップ体制が必要です。
馬見塚統子(社会医療法人財団大和会 東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)[地域共生社会]