No.5046 (2021年01月09日発行) P.60
野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)
登録日: 2020-12-17
最終更新日: 2020-12-17
選択的夫婦別姓制度が議論になっている。自民党内の女性議員の間でも意見が分かれているそうである。賛成派は現状では婚姻において男女どちらの姓を名乗ってもいいことになっているが、実際にはほとんどが男性の姓となっている現状を鑑み、男女平等が実現されていない、ということを理由とするのが主である。反対派は、夫婦同姓は日本の伝統であるとすると同時に、子供がどちらの姓を名乗るか、ということから波及する子供への影響を考えているようである。両意見はいずれも理解可能ではある。一方、10代、20代の方へのアンケート調査では、90%以上の女性と70%以上の男性が選択的夫婦別姓制度に「賛成」と答えているそうである。男性の70%以上が「賛成」と答えていることは頼もしい限りだが、男女で差があることが、現状をよく反映しているのではないかと思われる。
選択的夫婦別姓制度が認められているアメリカで私が仕事をしていた頃、アメリカの制度について話題になった時、技師のおばさんが「『小さな政府』というのがアメリカ人の理想にはあるのよ」と同僚の外国人の女性と私に説明をしてくれたことがある。「小さな政府」というのは18世紀にイギリスのアダム・スミスが「国家が経済活動に干渉せずに自由競争・自由貿易・分業が行われれば最終的に豊かさは増大する」という自由主義思想として唱えた思想である。高校時代に習ったことがあり、技師のおばさんに言われた時にピンときた覚えがある。
女性医師には結婚後にも旧姓を使用する、いわば「俗称」使用の方が結構おられる。20年前くらいにはカルテは公文書なので…などと問題になった記憶もあるが、なし崩し的にこのようになった気がする。ちなみに、私は選択的夫婦別姓制度のもとにではないが、生まれた時の姓のままである。パートナー(夫?)がアイデンティティーの崩壊になるから変えない方がいいと言ったからだ。子供達は私と同じ野村姓であるが、家族は今の所、壊れていない。
野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[選択的夫婦別姓制度]