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withコロナ時代のシミュレーション教育を考える[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.27

本間洋輔 (東京ベイ浦安市川医療センター救急集中治療科医長)

登録日: 2020-12-30

最終更新日: 2020-12-18

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新型コロナウイルス感染症の流行によって、シミュレーション教育のスタイルは大きく舵を切らざるをえなくなりました。

従来のシミュレーション教育は、換気の悪い密閉空間で、複数の参加者が密集し、密接環境で指導するというスタイルが多く、これらはすべて「三密」に該当してしまいます。さらに、医療従事者向けコースでは、複数の医療機関から参加者を募集することがあるため、さらに集まることが敬遠されることになりました。その結果、シミュレーション教育の開催頻度は全体的に大幅に減ってしまいました。

私は現在、AEDの普及・啓発・教育および訓練に関する取り組みを行う「公益財団法人日本AED財団」、一般市民が突然倒れた方を救命できる地域づくりをめざす「PUSHプロジェクト」、医療従事者により安全な処置時の鎮静・鎮痛のアイデアと技術を広める「セデーション研究会」でシミュレーション教育を行っています。前2者では一般市民向け、後者では医療従事者向けのシミュレーション教育を実施していましたが、いずれも今まで通りのシミュレーション教育ができなくなってしまいました。

そこで、「三密」を避けるために新たなシミュレーション教育を実施していくことにしました。たとえば、心肺蘇生教育であれば、Web会議システムに参加してもらい、自宅にあるクッションと体重計を組み合わせて胸骨圧迫の簡易的シミュレータにして利用する、AEDのコンソール画面はWeb画面に表示する、などです。このオンラインでの新しいシミュレーション教育は、「三密」を避ける以外にも、今まで距離や時間の問題で講習会に参加できなかった潜在的ニーズの拾い上げなど、新たな価値創造につながりました。他方、参加者の質の評価などに課題があり、学習目標自体をオンライン向けに組み直す必要性も感じています。

afterコロナではなく、withコロナとして、新しいスタイルのシミュレーション教育が様々な分野から発信され、シミュレーション教育が止まることなく提供されていくことを期待しています。

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