学校では児童生徒および教職員を対象とする健康診断が行われます。いずれも1958年施行の学校保健法で学校医職務として規定しています。労働者の健康診断や産業医選任規定は、1947年成立の労働基準法の健康確保に関する規制充実として1972年制定の労働安全衛生法があります。労働安全衛生法の適用も受ける教職員の健康診断は学校保健法が先に規定されたようにみえるため、学校保健法に基づき実施すると理解している方が多いと思いますし、学校の産業医活動を学校医が兼任しているのも多いと思います。
教職員の精神疾患による休職者の割合は、この30年で約5倍に増えています。メンタルヘルス対策として、2015年の改正労働安全衛生法で常時50人以上の労働者を使用する事業場へストレスチェックが義務化された等を踏まえ、文部科学省は学校にもストレスチェックを導入しました。また、同省の「学校における労働安全衛生管理体制の整備のために」リーフレットの2015年3月改訂の際、産業医に関し「学校医に加えて、選任が必要」と明記し、2019年4月の同第3版で「教育委員会で産業医の要件を備えた医師等を採用し、複数の公立学校の職員の健康管理を担当させる等の取組も有効である」と明記しました。しかし、学校や教育委員会で産業医を探そうにもなかなかみつかりません。日医認定産業医は毎年約2300人増えて総数10万人を超えましたが、産業医活動に従事しているのは全体の6割程度と推計されます。教職員50人以上の学校の産業医選任率は昨年5月1日現在平均91.7%ですが、47.0%と低い地域もあります。教職員50人未満では産業医の選任義務がなく、産業医資格を有しないであろう多くの学校医へ産業保健の知識が少ないまま健康管理医として兼任を依頼してよいか、という課題もあります。
教職員が心身ともに健康であるからこそ、児童生徒に良い教育・指導ができるのではないでしょうか。教職員の健康を守ることは、健全な学校運営・健康教育に大切なことです。そのためにも、より良い体制を早く構築していきたいと思います。