株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

人生日々新たな経験[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.39

近藤 丘 (東北医科薬科病院統括病院長)

登録日: 2020-12-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長年勤務した東北大学を辞し、現在の職に就いて5年が過ぎた。当初は呼吸器外科医として手術に入り、時に執刀もしていたが、意を決して数カ月でやめることにした。患者を主治医として担当することもなく手術にだけ加わる、ましてや執刀医となることは医師としてある意味責任を欠くことではないか、と思ったからである。もちろん、病院長としてはすべての患者に責任があるのは当然であるが、責任のあり方が違うのは言うまでもない。おかげで、苦労して(というほどでもないが)取得した外科専門医、呼吸器外科専門医も資格を喪失してしまった。

外科専門医、呼吸器外科専門医などの専門医制度、そして専門医機構の立ち上げにも深く関わってきた身としては少々寂しい気もしていたが、病院の管理業務の遂行を専らにしている中で、最近はあまり気にならなくなってきていた。そのような中、この仕事も残すところあと僅かという時になり、新型コロナ感染症という大きな問題が勃発した。通常の管理業務に新型コロナ感染症対策に関わる様々な業務が上乗せされることになり、振り返ってみれば、この業務に専念していて幸いであったとつくづく思われる。

病院における感染対策の重要性は理解していたつもりであるが、今回の新型ウイルスについては組みする相手の正体が当初よくわからなかったこともあり、あらゆる面で最大限の対策を講じた上でこの感染症の診療を担いつつ院内感染を極力避ける、という難問に真っ向から取り組まねばならず、感染対策の重要性を改めて認識した次第である。

外来受診者、入院患者、面会者、業者、病院研修、医学生や看護学生の実習、病院見学など病院外部からの出入りの対策、研修会、講習会、公開講座など大小の集会の制限、職員の健康管理や出張の管理、不足する個人防護具の管理などなど、感染制御部を中心に病院一丸となって対策を練り上げるという大変な作業ではあったが、医師としての人生の終盤において、通常の医療の実践だけでは得難い、きわめて貴重な経験をさせてもらっていることにむしろ感謝さえ感じている。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top