令和元年7月に国立循環器病研究センター(国循)は、北大阪健康医療都市(建都)に移転をしました。吹田市と摂津市とともに、大阪府の協力を得ながら、「健康・医療のまちづくり」をめざしています。国循の診療、研究環境も飛躍的に改善されました。
私は令和2年4月に、6年半ぶりに、前任地の九州大学から戻ってまいりました。着任当日には大阪府からのCOVID-19患者の病床確保の要請会議に出席しました。京都大学の学生時代はラグビー部に所属しており、俊敏さと判断力を要求されるスクラムハーフでした。私の専門は脳神経外科で、専門性の高い脳神経外科医療も、ある意味リスクマネージメントが要求される毎日ですが、今回は初めての病院長業務です。まさに就任初日から嵐の中の船出といった状況でした。幸い、小川久雄理事長をはじめ、旧知の職員の皆さんとの固い絆の中で、患者さん、職員の安全を専一に、未曾有の国家的な危機を乗り越えるべく奮闘しています。
脳卒中・循環器病は、超高齢社会が進む中で、健康長寿の延伸が喫緊の課題とされ、抜本的な対策の必要性が長く指摘され、対策基本法が施行されました。脳卒中・循環器病の登録事業も開始されようとしています。私自身、11年前に国循の部長に就任してから、脳卒中・脳神経外科のビッグデータ研究(J- ASPECT Study)を継続的に行っています。
人生100年時代を今後迎えると言われて久しいですが、生まれてから、生活習慣病の未病の時代を経て、発症、再発を繰り返しながら、QOLが徐々に低下していきます。2040年までの長期的なスパンで、健診、医療データ等を縦断的に連結し、未病の段階からの効率的な生活習慣の自己変容を促し、生活習慣病、脳卒中・循環器病の発症を予防する医療、医学の発展は、最も大切なものと考えています。今後とも皆様のご協力を得ながら、脳卒中・循環器病の制圧に向けて、全力で取り組んで参ります。どうぞ宜しくお願い申し上げます。