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新型コロナウイルス対応から見えてくるもの[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.15

夜久 均 ( 京都府立医科大学附属病院病院長・心臓血管外科学教授(第51回日本心臓血管外科学会学術総会大会長))

登録日: 2021-01-01

最終更新日: 2020-12-21

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人類の歴史において、2020年は特記される年になった。全世界に蔓延する新型コロナウイルス感染である。

新型コロナウイルスは、もちろん我々の医療、経済、教育、社会生活に多大な損失を与えたという意味では、一刻も早く終息させなければならないことは明白である。ただ、新型コロナウイルスに対応していく中で、今まで見えなかったことも見えてくる。いろいろなことを学んでいるのも事実である。それはおそらく、医療の未来を見せてくれているとも言えるからである。

1つは医療機関の役割分担の明確化と遂行がなされたことである。医療機関がそれぞれの規模や体制に合わせて役割分担を明確にし、コロナ対応にあたることが必然としてなされてきた。これはまさに地域医療構想の先駆けであり、新型コロナウイルス対応において具現化したと思う。そして、それらを行う上では情報共有がどうしても必要であり、我々京都府下重症患者受入医療機関14施設は第一波、第二波を通じて毎週Web病院長会議を行い、情報共有をしてきた。情報共有をして初めて連携・支援が可能になる。

2つ目は高度医療の集約化である。これは財務資料からわかる。コロナ禍における各病院の財務状況はかなり厳しいものであることは間違いない。厳しいを通り越して悲惨とも言える。その中で増加している数字があり、それは1日当たりの診療単価であり、入院も外来も今までで最高値になっている。これはどういうことかというと、つまりは通常の医療の制限をせざるをえない中、その中で大学でしかできない高度医療が優先的に行われたということである。それが診療単価になって表れたと理解している。おそらく近い将来、高度医療の集約化、そしておそらく働き方改革とも相まって施設の集約化が起こっていくことは間違いないと思われる。

最後に診療のIT化が挙げられる。これはコロナ特例として規制が緩和されたこともあるが、オンライン処方、オンライン診療は大学病院でも普通に行うようになり、また放射線画像の遠隔診断も整備しているところである。

このように新型コロナウイルスは高度医療の集約化、医療機関の集約化、効率的な患者情報の集積、AIホスピタルの推進、遠隔医療の実現化、医療における連携・支援の推進という将来の医療を力づくで前倒しにしている感がある。これはある意味、新型コロナウイルスが医療におけるパラダイムシフトが一気に起こる起爆剤となっているとも言える。一方、人と人が対面で行って初めて得られる価値をはっきりと認識し、それを如何に残していくかも我々に突き付けられた課題である。

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