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“Imagine”[炉辺閑話]

No.5045 (2021年01月02日発行) P.54

三木 保 (東京医科大学病院病院長・脳神経外科分野教授)

登録日: 2021-01-02

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The BeatlesのJohn Lennonが歌った“Imagine”……imagine all the people living for today……。常々この言葉が生きる上で、あるいはすべての営みの上でもきわめて大事だな、と思う。今日の予定を“Imagine”、相手の状況を“Imagine”、これから行おうとする処置・手術を“Imagine”。相手を“Imagine”することにより、より相手の立場になれスムーズな人間関係が生まれる。仕事を“Imagine”することにより、解決すべきことがわかり段取りがつき、変化に応じて対応もできる。

院を預かる立場になり、院長として仕事をする時、多くの情報を得て、患者、スタッフの立場・状況、気持ちを“Imagine”することは、組織を前に動かす時の“decision making & action”の根本を成していると思う。
過日、いくつかの医療事故を検証する機会があった。その際において、もし“Imagine”があれば防げえたのでは、と思うケースも少なくない。特に当たり前のように行っている処置・手技において油断、慣れの中で、再度振り返って“Imagine”していない場合に事故は多いようである。また、昨今の社会の殺伐としたニュースを見聞していると、相手を思う“Imagine”をやめて「自分さえ良ければ」ということが心底にあるようにも思える。能動的に“Imagine”することには確かにエネルギーが必要であり、面倒でもある。しかし今こそ、この“Imagine”を意識すべき時だと思う。何故ならば、“Imagine”は人としての「優しさ」、「思いやり」、「責任感」、「プロフェッショナリズム」と同義語だと思うからである。そして、医療を担う我々のテーマの医療安全においては、まさにレジリエンス・エンジニアリングの柔軟で適応力のある調整の基本となるものであろう。

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