2019年4月、どういうわけか附属病院長に選任された。想像以上に雑務が多い仕事だ。手術に入る機会も減り、外来診療も減らすことになった。しかし、悪いことばかりでもなく、病院というのはいろいろな人が働いて、たくさんの力で成り立っているのだなー、と小学生みたいなことを改めて実感できたのは良かったこと。そして、心の底からスタッフに感謝することが多くなった。
さて、院長になって最初の難題が2024年問題への対応であった。医師の働き方改革、残業の上限規制への対処である。前任の院長が医師の労働時間の把握のために奔走していたのはなんとなく知っていたが、実際には36協定の確認、当直体制の見直し、タスクシフティング等々、やることは山積。
自分の頭の中が整理されていなかったのでまずは勉強会、ということで、病院部長会でセミナーを開催したのが2019年の12月。勉強会で感じたのは、地方においては医師不足の問題が解消されないとどうにもならない、ということであった。年が明けたら考えようと、得意の先送り戦法で年末休暇、穏やかな年明けを迎えたところまでは良かったのだが、その後は新型コロナである。福島は全国的にみれば感染者数は決して多くはないが、それでも対応に追われ、働き方改革どころではなくなった。スタッフの残業は増加し、週末も対応に追われた。どうして自分が院長のときに……と思ったのは私だけでないだろう。愚痴ばかり言ってはいられないのだが、今回のコロナ禍で感じたのは、医療というのは日頃から余力を残しておかなくては、ということである。
昨今、多くの病院は経営に苦慮され、人もモノもぎりぎりでやっているところが多いと思う。当院も同様。しかも災害は増え、新たな感染症が流行するなど、想定外だらけである。我々福島の人々は先の東日本大震災でも想定外を実感したばかりである。組織として余力を持つことは本当に大切で、まさに医師の働き方改革そのものだ。どうやったら皆に余力を持って働いてもらえるか、が今の私の最大の課題である。