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【識者の眼】「医学教育における補完代替療法の位置づけは?」大野 智

No.5046 (2021年01月09日発行) P.64

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2020-12-23

最終更新日: 2020-12-23

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「2023年以降、国際基準で認定された医学部以外の出身者には、米国で医師になる申請資格を与えない」

2010年9月の米国の外国人医師卒後教育委員会(ECFMG)による通告、いわゆる“2023年問題”は日本の医学教育界に衝撃を与えた。その後、日本医学教育評価機構(JACME)が世界医学教育連盟(WFME)から国際評価機関としての認証を受け、国際基準を踏まえて医学教育プログラムを公正かつ適正に評価することとなった。その評価基準の「教育プログラム」の大項目(領域)に「補完医療との接点を持つこと」(※補完医療には、非正統的、伝統的、代替医療を含む)が、カリキュラムで確実に実施すべき水準のひとつとして挙げられていることは、ご存知であろうか? 1)

米国では、国立衛生研究所(NIH)に属する国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health:NCCIH)を中心に、統合医療・補完代替療法に関する研究・教育事業等に対して、年間3億ドル以上の国家予算を投じて取り組んでいる。また、多くの医科大学において補完代替療法に関する系統講義がカリキュラムに取り入れられている。さらに補完代替療法を近代西洋医学と組み合わせ実践・提供する統合医療の施設・センターも大学病院等に併設され始めている。

一方、わが国においては、統合医療・補完代替療法を専門とする公的研究機関は存在しない。また、大学医学部においても、統合医療・補完代替療法を掲げた正規の講座は設置されていない。そのため、評価基準で定められている「補完医療との接点を持つこと」(※補完医療には、非正統的、伝統的、代替医療を含む)について、どのような講義あるいは実習が行われているのか実態は明らかになっていないのが現状である。

【文献】

1)医学教育分野別評価基準日本版 世界医学教育連盟(WFME)グローバルスタンダード 2015年版準拠 [https://www.jacme.or.jp/accreditation/wfmf.php

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法⑬]

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