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【識者の眼】「各地区単位のコミュニティで行う人生会議」岡江晃児

No.5049 (2021年01月30日発行) P.62

岡江晃児 (杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)

登録日: 2021-01-18

最終更新日: 2021-01-18

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行政は多くの住民への啓発や行動変容において大きな役割を担っており、私が現在ソーシャルワークしている大分県杵築市では、多くの国民が認知している「終活」という言葉を活用し、2018年度から「きつき終活応援プロジェクト」として様々な事業を展開し、元気な時から「死生」や「人生会議」について考える文化の構築を目指している。その中の一つとして、市政出前講座「終活・エンディングノート書き方講座」がある。この出前講座は、各地区単位のコミュニティの範囲で行っていることが特徴である。一般的に今までの終活は、個人や家族単位で行われてきた傾向があるが、独居の高齢者世帯や身寄りがない世帯が増加傾向の中、個人や家族といった単位では限界があり、各地域の地区単位の範囲で住民同士が支え合うコミュニティの中での終活が重要であると考えている。そこで杵築市では、自分が何を大切にしてきたのか、人生最終段階までに何を大切にしていきたいのか等の各々住民の価値が共有できる地区単位のコミュニティの範囲で出前講座を行っている。

とある地区の月1回集まる会食系サロンに参加していた独居の男性Aさんが、エンディングノートの好きな食べ物を書く欄に、大分県の郷土料理「りゅうきゅう」を記載していた。そこで私はAさんに「最近りゅうきゅうを食べているのですか?」と質問したら、「毎日りゅうきゅうを食べている。死ぬ直前もりゅうきゅうを食べて死にたい」と返答してくれたのだが、その会話を聞いていた、サロンに参加していた住民の方々が「Aさんが死ぬ前になったら、みんなでりゅうきゅうを作ってAさんのところへ持っていくからね」と笑顔で言われていた。私はその際のAさんの笑顔を見て、Aさんの価値を住民同士が共有し尊重する空間が生まれたこと、またAさん自身がそのようなコミュティの中で人生の最終段階を迎えることの安心感にも繋がっていると実感することができた。そして、各地区単位のコミュニティで行う人生会議の重要性を再認識した共に、今後も引き続き様々な地区のコミュニティへ展開し、「死生」や「人生会議」について考える文化を構築していくソーシャルワークを実践していきたいとの思いを強くした。

岡江晃児(杵築市医療介護連携課兼杵築市立山香病院・ソーシャルワーカー)[人生会議][終活]

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