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【識者の眼】「地域包括ケアを基盤としたコロナ対策を」小倉和也

No.5051 (2021年02月13日発行) P.57

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2021-01-20

最終更新日: 2021-01-20

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国内で新型コロナウイルス感染者が初めて確認されてから1年が経過した。冬季の患者数の増加は想定されてはいたが、行政・医療介護職と市民が連携しての体制は、残念ながら十分に整ったとは言えないまま、現在の感染拡大を迎えてしまった。

現場で家庭医として発熱外来や訪問診療を行いながら、軽症者宿泊施設でのオンライン診療、コロナ禍で増えた抑うつや不登校の相談対応など、今回のパンデミックがもたらした様々な影響と向き合っている。また、地域や学会の対策委員として各地における連携体制の課題なども見聞きしている。その中で実感しているのは、つまるところコロナ対策とは、地域連携による課題解決、すなわち地域包括ケアや地域共生社会構築の取り組みを基盤として挑戦すべき課題であるということだ。

NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワークは、27年前から医療介護職と市民が連携した体制づくりを掲げて活動してきた。会員はそれぞれの地域で医療介護の連携体制を作るとともに、会としても台湾在宅医療学会と連携して、台湾からの防護具寄贈により各地のクラスター対策を支援するなど、国内外の連携体制づくりやコロナ対策について情報交換をしつつ、この二つを一体的なものとして推進してきた。両者に共通するのは、医療資源や地域性にあわせて体制を個別に構築しなければならない点だ。地域ぐるみでコロナ禍を乗り越えることが地域包括ケア・地域共生社会の実現にもつながるものと考えている。

困難な状況の中では、日々の対応に追われ、包括的・長期的な視点を忘れがちになる。しかし、ここで今一度立ち止まり、地域とは何か、社会としてあるべき姿は何かを見つめ直す必要があるのではないだろうか。その上で、短期的・局所的な解決だけにとらわれず、長期的・包括的な視点も持ちながら、これまで地域ごとに蓄積してきた行政・民間の事業所間や職種間の連携、そのための情報共有システムなどを生かした対策と体制づくりを行うことが有効であると考える。

小倉和也(NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[新型コロナウイルス感染症]

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