株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「真の費用対効果を考える〜医師と患者の関係:その2〜価値に基づく医療VBM」三宅信昌

No.5051 (2021年02月13日発行) P.64

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2021-01-22

最終更新日: 2021-01-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回(No.5049、2021年1月30日号)と同様、真の費用対効果において、医師と患者の関係は重要であるという話をします。まず、No.5017・No.5022(2020年6月20日号、7月25日号)に記載した患者主体の評価PRO(patient reported outcome)について解説致します。

疾患治療において、一般的には臨床的な数字が正常になることを目標にします。しかし、患者側からすれば数字が良いから問題なしではありません。例えば、血圧やHbA1cが正常になったからそれで問題なし! ではないし、関節リウマチや膠原病などで炎症反応(CRPなど)が正常だから問題なし! でもなく、腰や関節などのレントゲン写真、MRI、CT検査で正常だから問題なし! でもありません。患者の症状、訴えを最も重要視する事がPROであり、それを臨床的治療判断に入れる事で真の医療の目的が達成されます。

医学的根拠(evidence based medicine:EBM)が医学的に重要であることは間違いありませんが、PROを取り入れた結果をさらに重要視することを「価値に基づいた医療」(value based medicine:VBM)といいます。

患者は医師の前では正直な気持ちや正確な症状を言わないことがあります。また治療強化を躊躇したり拒んだりすることもあるかと思います。その際に、看護師やスタッフ等が患者さんとのコミュニケーションを図ることによって、疾患に対する正確な症状、不安や希望、家族に対する気持ち、家族の状態(家庭内トラブル等)や金銭問題などの情報を得ることができます。最終判断は医師の医学的評価がすべてではなく、EBMにPROを加えたVBM、すなわち患者さんがいかに幸せな生活を送れるようになるのかが最終目的となると思います。その意味でもチーム医療の重要性が示唆されます。

外来診療において、思わず惰性的診療をしてしまう事があります。これを臨床的慣性(=惰性)(clinical inertia)、慣性的治療(therapeutic inertia)や慣性的診断(diagnostic inertia)と言います。患者一人一人のPROを理解することで、このような惰性的診療を防ぎVBMに繋がると考えます。

このような臨床診療は、医療費に対して、それ以上の患者の生活の幸福度が得られ、それが真の費用対効果となります。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬関連]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top