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【識者の眼】「COVID-19の治療と漢方薬のエビデンス─支援のお願い」並木隆雄

No.5051 (2021年02月13日発行) P.60

並木隆雄 (千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)

登録日: 2021-01-22

最終更新日: 2021-01-22

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明けましておめでとうございます。はじめて、「識者の眼」に連載記事を執筆させていただき不安と緊張が交錯しております。どうか1年間の漫筆をお許しください。

さて、たぶん他の筆者の先生方も同じであろうと推測しますが、まずは外せない話題である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を第1回の話題にしたいと思います。筆者は、もともとは循環器内科医でしたが、現在は縁があり漢方医学の道を歩んでおります。おおよそ1年半前から、日本東洋医学会の副会長の要職に就かせていただいておりました。折しも2019年12月頃から中国に端を発したCOVID-19が、ついにはパンデミックとなり、世界的に危機的な状況になりました。日本においても2020年4〜5月に緊急事態宣言が発令され不安定な状態となったのはご存知の通りです。

日本においてはCOVID-19に対してこれまで幾つかの治療薬の研究成果が伝えられていますが、漢方薬はどうなっているのでしょうか。実はCOVID-19が最初に報告された中国では、多くの伝統医学の医師が活躍し、COVID-19に伝統薬が使われ、大いに有用だったとの報が既に3月時点には日本に届いていました。その報を聞いた時、COVID-19に対する漢方薬での治療の可能性に気づかされました。ただし、中国でのそれらの治療は、ランダム化試験などの高いレベルの研究がないため、候補の段階でした。それに反応して日本で漢方薬のエビデンスを作るべきだという漢方の若手の意見が立ち上がったのをきっかけに、筆者は日本東洋医学会主導での臨床試験を企画実行する責任者の一人となり現在に至ります。COVID-19に対して、現在、次のような3臨床研究を開始しました。

1. 後向き症例登録:COVID-19患者への投薬実態調査(東北大学担当)

(解説)西洋薬も含む投薬状況を調べ、ランダム化比較試験などのデザイン・症例数を決める資料とする

2. 前向き介入:COVID-19患者への治療効果(東北大学担当)

(解説)軽症・中等症患者への漢方薬投与追加効果のランダム化比較試験

3. 前向き介入:健常者へのCOVID-19発症予防効果(千葉大学担当)

(解説)医療関係者に対する実薬・偽薬の予防内服によるランダム化比較試験

公的資金の応募や複数の製薬企業より研究資金、実薬などのサポートを受けています。ただし、統計解析などでも、多額の費用が掛かるため、いまだ十分ではありません。日本東洋医学会として、支援を募っています(東洋医学会ホームページ:www.jsom.or.jp)。ご賛同いただける方をお待ちしております。

並木隆雄(千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)[漢方]

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