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【識者の眼】「ヤングケアラーへの気付きと支援を」小橋孝介

No.5051 (2021年02月13日発行) P.63

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-02-02

最終更新日: 2021-02-02

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ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されるような家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」とされる。昨年末に厚生労働省が、全国の学校や自治体への実態調査を行う事を発表した。ヤングケアラーは「子どもらしく過ごせる権利」や「教育を受ける権利」など、本来守られるべき子どもの権利が侵害されている可能性がある。早期に発見し必要な家族支援や関係機関につなげることが求められている。

2019年度に行われた要保護児童対策地域協議会(要対協)における「ヤングケアラーの早期発見に関するアンケート調査」では、ヤングケアラーの実態を把握していると回答した要対協は30.1%にとどまる。報告元は39.5%が学校で最も多く、医療機関は3.8%だった。ヤングケアラーがケアしている対象はきょうだいが最も多く、精神障害や依存症を抱える親がそれに続く。

ヤングケアラーは、本来ならば様々な経験を積み、自立するための準備を進める重要な時期に、学校への通学ができなかったり、年齢相応の経験を十分に積むことができなかったりする。日々の診療の中で、例えば障がいや慢性疾患を抱える子どものきょうだい児、精神疾患を抱える患者の子ども、要介護高齢者の家族の一員としてケアに関わっている子どもなど、ヤングケアラーの存在に気付くチャンスは沢山ある。しかしながら、そういった存在は意識しなければ見えてこない。

また、ヤングケアラー自身がヤングケアラーであることを認識することは難しいとされており、自分からSOSを出す事はほとんどない。ケアの対象となっている家族に関わり、早期にヤングケアラーの存在に気付くことができる我々が、積極的にその存在に気付き、市区町村の窓口に情報提供を行って、支援につなげていかなければならない。

【参考文献】

▶2019年度の調査研究結果を受けて作成された「ヤングケアラーの早期発見・ニーズ把握に関するガイドライン(案)」

 [https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/04/koukai_200427_10_2.pdf] 

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待][子ども家庭福祉][ヤングケアラー]

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