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【識者の眼】「日本の医薬品開発はこれからどうなる? ─臨床開発力の強化に向けて」藤原康弘

No.5054 (2021年03月06日発行) P.63

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-02-16

最終更新日: 2021-02-16

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医薬品や医療機器を自国内で開発し、製造し、診療へと供する流れが如何に大切なものであるかは、2009年の新型インフルエンザ騒ぎの際にも言われていたことであるが、新型コロナウイルス禍の中、輸入医薬品に頼らざるを得ない現状で、改めて思い知らされている。ふり返れば、厚労省が2002年8月に取りまとめた「医薬品産業ビジョン『生命の世紀』を支える医薬品産業の国際競争力強化に向けて」の「イノベーション促進のための集中期間」(5年以内)に行う具体策、そして2007年3月に取りまとめた「ワクチン産業ビジョン 感染症対策を支え、社会的期待に応える産業像を目指して」のアクションプランを読むと、なぜ我々はこの計画を実現できなかったのであろうかと忸怩たる思いになる。

昨年10月開催の第79回日本癌学会学術総会での発表に向けて資料収集やデータ解析を進めていた時に、数字としても実感した。昨春時点で欧米で承認されているのに日本未承認の抗がん剤88剤のうち31剤(35%)が、国内に開発・製造販売主体が無い企業が製造販売しているものだった。PMDAはこれまで世界3大規制当局となるべく、審査期間の短縮に邁進してきた。そして、今や米国FDA、欧州EMAと肩を並べる審査期間を実現している。しかし、国内に開発・製造販売主体が無い場合、どれだけ審査のスピードが速くても、新しい画期的医薬品への国民のアクセスを実現しようが無い。

バイオ医薬品を含め、あらゆる疾患領域の医薬品開発の大半は、現在米国で行われている。そのうち画期的医薬品の多くをベンチャー企業、特にemerging biopharmaceutical companiesと呼ばれる新興企業が担う傾向が、最近特に強まっている。一方、日本で産官学がバイオベンチャー育成を始めてからいったい何年になるのだろう。大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律(TLO法)が出来たのは1998年、産業活力再生特別措置法(日本版バイドール法)が出来たのは1999年である。

昨年10月から政府の健康医療戦略推進本部の傘下に医薬品開発協議会が立ち上がり、医薬品の実用化推進の議論を始めている。私も委員として参画しているが、総人口の5人に1人が後期高齢者になるとされている2035年まであと約15年。この協議会が「20年前の議論の繰り返し」と将来言われないように、これが最後の機会であると肝に銘じて、医療分野の実用化力・臨床開発力の強化策を提言し、実行し、日本国民の健康・福祉の維持・向上に貢献したい。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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