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【識者の眼】「緊急事態宣言延長の議論において、1都3県のリーダーシップにこそ注目したい」和田耕治

No.5055 (2021年03月13日発行) P.63

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-03-03

最終更新日: 2021-03-03

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特措法に基づく2回目の緊急事態宣言の「解除」の判断が難しくなっている。その理由としては、前回ほどの感染者数の減少が見られないこと、そして変異株はより感染が広がりやすい可能性があって、解除後に感染者数の増加が比較的すぐにあり得ることであろう。

しかし、緊急事態宣言は、その基本的対処方針にもあるように、「感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ、急速な増加が確認されており、医療提供体制もひっ迫してきていることから、全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある状況であること」が新型コロナの肺炎の重症度と併せて考慮されて、発令に至っている。そのため、そういう状況でなくなったら解除するという考え方は十分にありえる。

No.5048(1月23日号)本コーナーで次のような筆者の願いを述べた。「緊急事態宣言の間は、『感染が収まることを祈って待つ』ではなく、今から、どこまでこの機会に感染者を減らすのか、政府、各自治体の目標のすりあわせ、そしてそこに向けた連携や連帯(が必要)」(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=16353)。

現在該当する1都3県は、宣言の間に感染が広がりにくい社会作りをどのように進めてきたのか、または延長するなら残りの期間にどのように取り組むのかを、少なくとも市民には示すべきだし、国はそれを求めても良いと考える。1都3県に住んでいる私としても身の回りのハイリスク場面で感染対策の強化は実感されない。もっと、メディアや市民は、緊急事態宣言が解除されたらどのように感染対策を進めていくのかについて、1都3県に問うてはどうであろうか。飲食の場面への支援や指導を自治体はすべきではないか。

都道府県には、今回の特措法改正で「まん延防止等重点措置」という新たな武器が増えたので、これを効果的に使える体制が必要である。地域の対策の主体は、都道府県であり、地元の専門家も交えて意思決定をしていかなければならない。現状では、国に延長を要請するだけで、問題を先送りしているのではないかとも感じられる。

想像するに、今年は衆議院選挙やオリンピックなどもあることから、菅総理は本当に難しい判断が求められているだろう。ただ、今後、再び感染者数が増えることは想定されている。政府だけでなく、都道府県が市町村と連携してどう動いたのか。私は、今こそ1都3県の知事などのリーダーシップに注目している。

※この原稿は2021年3月3日に執筆しました。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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